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Episodes

純愛、故に

Episode09

R-18G
Date:
2022.12.24
染谷千冬・染谷千秋
シナリオ制作者:
たぬき様
シナリオ頒布先:
booth
改変シナリオ:
URL

本編

あなたは、静かな海辺に立っていた。 暖かな光があなたを照らし、海に反射された光があなたの瞳に映る。水際では鳥たちが無邪気に遊び、遥か上空にはかもめが列を作って飛んでいる。辺りには人影は見えず、砂浜には足跡が二つ並んで見える。足跡の続く先はどこまでも遠く、随分遠くまで二人で来たようだった。

少し肌寒いくらいの気温の下、隣を見れば、髪を緩く結んだ千秋があなたを見つめていた。 千秋は酷く嬉しそうに微笑み、あなたに告げる。

「好きだ」 「これから先、何があろうとも」 「俺はずっと、千冬を愛してる」

そうしてあなたの頬に手をあて、柔く口付けをした。たった二人だけの世界で。 ────そこであなたは目を覚ます。 気が付けばそこは自室のベットだった。さっきのはどうやら夢だったようだ。 ただ、胸の中にある優しくてしあわせな気持ちは夢ではないだろう。

それより今日は千秋とのデートだ。 朝日が差し込み空がきらきらと光る今日は、絶好のデート日和。 まるで世界に祝福されているような、そんな心地いい目覚めに、SAN値を1回復させる。

[ 染谷千冬 ] SAN : 50 → 51

優しい風が吹き、あなたの髪を揺らす。あなたは駅にあるモニュメントの前で千秋を待っていた。 約束の時間まであと少し、というところで軽やかな足音が聞こえた。

染谷千秋 : 「千冬!お待たせ」 染谷千秋 : 「ごめんな、バイト長引いちゃってさ~」

振り返ればそこには千秋がいた。 いつもより少し着飾った彼は、あなたを見ると嬉しそうに微笑む。

染谷千冬 : 「問題ない」 染谷千冬 : 「……いつもよりきれいだな」 染谷千秋 : 「だろ~? 千冬も似合ってるぜ、その服」 染谷千秋 : 「さすが俺~」と言いながらその手を握ります。 染谷千冬 : 「俺はいつもと変わらないだろう」握り返します。 染谷千秋 : 「いつも通りかわいーよ」そう言って歩きだします。 染谷千秋 : 「ここの渓流、久々にきたくてさ~。この時期にも紅葉見れるらしいぜ~」 染谷千冬 : 「季節外れの紅葉か。見てみたいな」 染谷千秋 : 「きっと綺麗だぜ~」

あなた達は最寄り駅から少し歩いた先の、 渓流沿いのウォーキングコースを歩き、不揃いな大きさの石が敷かれた、高さもところどころ変わる階段を上っていく。 落ちた木の葉を踏みしめながら歩くと、あなた達の眼前に真っ赤に染まった紅葉がその美しさをあらわにする。

染谷千秋 : 「お~すげー」 染谷千冬 : 「良い景色だ」 スマホを取り出して、眼下に広がる景色と、赤々とした紅葉を撮ります。その後、千秋に向けてスマホを構えます。 染谷千秋 : スマホに向けてポーズを取ります。 シャッター音が聞こえてから千冬に近づいていきます。 「ほら、千冬も」 そうして千冬の腰に手を回し、内蔵カメラを向けます。 染谷千冬 : 「ああ」いつもの仏頂面で映ります。 染谷千秋 : 写真を撮る瞬間に合わせて千冬の頬にキスをします。 染谷千秋 : 「上手く取れたぜ~」そう言って千冬のスマホにも写真を送ります。 染谷千冬 : 「ありがとう」 染谷千秋 : 「いーよ」 染谷千秋 : 「最初にきた時から変わらねーな~ここ」そう言ってしばらく景色を目で楽しみます。 染谷千冬 : 「前は秋に来たんだったな。……他の季節にも来てみたい。夏とか、涼しめそうだ」 染谷千秋 : 「そうだな~。そん時はまた釣りしてみるのもいいかもな~」 染谷千冬 : 「ああ」

そうしてあなたたちは道沿いを歩いて行く。 川の水音がザーと響く中に、鳥のさえずりが時々混じっている。 しばらく階段を上ると、川原まで辿りついた。

染谷千秋 : 「あ。道具もってきてないや。今日はお預けだな~」 染谷千冬 : 「構わない。千秋と一緒なら何だっていい。歩いてるだけでも、俺には十分だ」 染谷千秋 : 「はは、俺も」

渓流釣りを楽しんでいる人達を背に、地に砂利が広がるその場所を通り過ぎながら、あなたたちは展望台へと歩いて行く。 その途中、千秋は足を止めてあなたの方へ振り返る。

染谷千秋 : 「な、千冬~」 染谷千冬 : 「なんだ」 染谷千秋 : 「好きだ」 染谷千秋 : 「千冬のためなら何でもできるよ。俺」そう言って手を握ります。 染谷千冬 : 「……俺も、千秋のためなら何でもできる、と思う」 染谷千秋 : 「……」その答えに目を細めます。その後千冬の頬に手を当ててキスをします。 染谷千秋 : 「展望台の方行ってみようぜ。アスレチックなら空いてるかもな~」 染谷千冬 : 「……アスレチックか、いつぶりだろうな。こういう場所の遊具は、近場の公園の遊具とは違ってて好きだった。……空いていたら遊ぼう」 染谷千秋 : 「わかる。遠くにきた、って特別感あるよな~」 染谷千秋 : 「広いからきっと大丈夫だろ。昔みたいにさ、遊んじゃおうぜ」 染谷千冬 : 「ああ」

千秋はあなたの手をとったまま歩き出す。 展望スポットは大きな広場になっていて、端が木の柵で囲まれ、街が一望できるようになっている。 公園にあるような遊具が置かれているほか、街の地図が貼られた案内板や自販機、 いくつかのベンチが置かれ、売店もあり、少し休憩できるようなスペースになっていた。 街の写真を撮ったり、休憩したり、子どもが遊具で遊んだり、皆思い思いの休日を楽しんでいるようだ。

染谷千秋 : 「空いてるな。ラッキ~」 染谷千秋 : 「千冬、先に上着脱いどきな~」千冬のダウンジャケットを脱がせます。 染谷千冬 : 千秋に任せて脱がされます。その後上着を受け取り、遊具の端にかけておきます。 染谷千冬 : そして遊具のほうに向きなおり、でこぼこの坂をロープを握ってよじ登ります。頂上に辿り着いて、柵に凭れかかりながら千秋を見下ろします。 「……千秋」 染谷千秋 : 「はは、待てよ!」 千冬の後に続いてあがり、千冬の側に寄ります。 染谷千秋 : 「な、どっちが先に向こうに着くか勝負しようぜ」 そう言ってツリーアドベンチャーの先を指します。 染谷千冬 : 「わかった」千秋にしかわからない笑顔で答えます。

アスレチックで競争することになりました。 (STR + DEX)*3 を振ってください。 片方が成功した場合は、そちらが先についたことにします。 どちらも成功/失敗した場合は、ccbを再度振り直してください。値の小さい方が先についたことにします。

染谷千秋 : CCB<=69 (1D100<=69) > 34 > 成功 染谷千冬 : CCB<=69 (1D100<=69) > 23 > 成功 染谷千秋 : ccb (1D100) > 78 染谷千冬 : ccb (1D100) > 34 染谷千冬 : 「もっと体幹を鍛えたほうがいい」振り向いて笑いかけます。 染谷千秋 : 千冬が到着してからしばらくした後に到着します。 「こんにゃろ~」そう言って千冬の頬をむにります。 染谷千秋 : 「くそ~……。もっかいやんねえ?」 染谷千冬 : 「ああ」 染谷千秋 : 「今度は負けねえからな~」 染谷千秋 : CCB<=69 (1D100<=69) > 13 > スペシャル 染谷千冬 : CCB<=69 (1D100<=69) > 11 > スペシャル 染谷千秋 : CCB (1D100) > 83 染谷千冬 : ccb (1D100) > 81

あなた達はほぼ同時に目的の場所へと到着します。

染谷千秋 : 「おい、手、抜くな、……って!」千冬とほぼ同時に滑り込みます。 染谷千冬 : 「……ふ」千秋のペースに合わせていたことを見抜かれていて、つい笑みを零します。 染谷千秋 : 「……もっかい!次は本気でやれよ~?」 染谷千冬 : 「ああ」 染谷千秋 : CCB<=69 (1D100<=69) > 45 > 成功 染谷千冬 : CCB<=69 (1D100<=69) > 68 > 成功 染谷千秋 : CCB (1D100) > 82 染谷千冬 : ccb (1D100) > 69

三度目の正直。千冬の方が千秋よりはやく、目的の場所へ到着します。

染谷千冬 : 「……本気でやったぞ」 染谷千秋 : 「っはあ、クソ、千冬はやくね~?」 染谷千秋 : 「……あち~」上着を脱いで片手に持ちます。 染谷千冬 : 「普通だ」 染谷千秋 : 「こんにゃろ~」千冬の言葉に口を尖らせます。 染谷千秋 : 「……なら、次はあれで勝負だ」そう言ってうんていを指さします。 染谷千冬 : 「わかった」

そうしてあなたたちは、日が傾くまで近くの遊具で遊ぶ。幼い頃に戻ったかのように、子供たちと同じように全力で駆け回った。 自分達には、こうして母に見守られながら、日が暮れるまで遊んだ時もあったのだろう。 ぼんやりとした映像が、実感としてではなく断片的な情報として、あなたの脳裏に浮かびあがる。 千秋は売店でお茶を二つ買い、キャップを開けてから片方をあなたに手渡す。

染谷千秋 : 「喉乾いたろ?お茶飲みな~」 染谷千秋 : 「こうしてまた、千冬と遊んでみたかった」1/3程お茶を飲みます。 染谷千冬 : 受け取ってペットボトルを高く傾けます。ごくごくと喉仏を上下させ、残り少なくなるまで飲み干します。 「……小学生以来か。懐かしい」 染谷千秋 : 「千冬あん時も早かったよな~」 染谷千冬 : 「そうだったか? ……千秋のほうが、足は速いのにな」 染谷千秋 : 「な~。……腕力かな」不服そうに言って千冬の腕を触ります。 染谷千冬 : 「……全身を使うからな。バランスだ」 染谷千秋 : その言葉を受け、むっとしたまま千冬の全身をチェックしていました。しばらくして、諦めたように言います。 「くそ~、筋トレの種目増やさないとな~」 染谷千冬 : 「……俺も、もう少し頑張ろう」千秋が頑張るならと、自身の日々の筋トレメニューについて考えを巡らせます。 染谷千秋 : 「おいおい、それじゃ意味ないだろ~? 千冬はそのままでいいって」 染谷千秋 : 「……にしても、随分時間たっちゃったな。腹減ったろ。夕飯どうする?」 染谷千冬 : 「家で大丈夫だ。帰って何か作ろう」 染谷千秋 : 「お~」

日はすっかりと傾き、鮮やかな橙色に空は染まっている。 どこか物悲しい鳥の鳴き声が聞こえる中で千秋が振り返る。その目があなたを見つめ、手が差し出される。

染谷千秋 : 「じゃ、帰ろうぜ~」 染谷千冬 : 「ああ」 差し出された手に、自分の手を重ね、指を絡めて握りしめます。

あなたたちは、ぽつりぽつりと他愛ない話をしながら、二人並んで駅へと向かった。 夕飯は何にしようかと話をしていると、突然、千秋のスマホが音を鳴らした。 あなたに断りを入れて、しばらくスマホの画面を眺めていた千秋が、申し訳無さそうにあなたへ向き直る。

染谷千秋 : 「悪い。バイト先からだ。急にこれなくなったヤツいるから、急ぎで出れないかってさ~」 染谷千冬 : 「……そうか」 染谷千秋 : 「ごめんな~。いつ終わるかわかんねぇし、千冬先帰っててよ」寂しそうな千冬の頭を撫でて、一度抱きしめます。 染谷千冬 : 「……終わった時には、迎えに行きたい」 染谷千秋 : 「ん。わかった。終わったら連絡するよ」 染谷千冬 : 「ああ」 名残惜しげに抱きしめる腕に力が入りますが、すぐに体を離します。

そうして千秋は、あなたを駅のホームまで見送る。 駅は人波で混雑していた。ざわめく喧騒の中、時間は無情にも過ぎていく。 聞き耳をどうぞ!

染谷千冬 : CCB<=30 【聞き耳】 (1D100<=30) > 11 > 成功

千秋が何か呟いた気がした。

染谷千冬 : 「……何か言ったか?」 染谷千秋 : 「ん? いや?」 染谷千冬 : (……気のせいか?)

がたんがたん、と電車が近づく音がする。 あなたと千秋を隔てる電車が到着し、あなたはそこへと足を乗せた。そうしてあなたが乗るのを見届けながら、千秋はあなたへ手を振る。 電車のドアが閉まり、ゆっくりと走り出す。 振動に身を任せながら、あなたは今日一日の出来事を思い返すだろう。 アイデアを振ってください。

染谷千冬 : CCB<=80 【アイデア】 (1D100<=80) > 3 > 決定的成功/スペシャル

急ぎのバイトだと言っていたが、千秋に急ぐような素振りは見られなかった。 そして今日、千秋の態度には違和感があった。いつもと変わりないように思えたが、何やら嫌な予感がする。 胸騒ぎがした。

染谷千冬 : (……不安になってきた。どこか、おかしいような気がする。でも言葉にならなくて、きっと気のせいだと思うのに……でも、この胸騒ぎはなんだろう) 染谷千冬 : (……電車はもう動いている。今から戻るのも、か……。……千秋) スマホを取り出して、千秋にメッセージを送ります。 『ご飯何がいい』 染谷千秋 : 『適当にこっちで済ませる。一人だからって雑に済ませないで、しっかり食べろよ』数分も立たないうちに千秋からレスポンスが返ります。 染谷千冬 : すぐに自分の心配をする弟が面白くて、笑みが零れます。 『千秋こそ、しっかり食べろ』 染谷千冬 : (……気のせいで、ありますように) 窓の外の移り変わる景色を眺めながら、今日と明日のご飯について考えます。

そうしてあなたは、弟へ彼を気遣う言葉を投げた。 不安定な揺れに身を任せながら、あなたはささやかな日常を願う。

そんなあなたを嘲笑うかのように、しばらくして車両内にアナウンスが響く。

『────XX駅にて接触事故が発生しました。これによりXX線で遅延が考えられます。XX線をご利用のお客様は御手元の乗車券を確認し────』

どうやら先程あなた達がいた駅で、人身事故が起こったようだ。

染谷千冬 : (……千秋は大丈夫だろうか。急いでいたのに、巻き込まれていたら大変だ) 『接触事故らしいが、大丈夫か』 メッセージを送ります。

既読のまま、特に反応はありません。

染谷千冬 : (……?) 頭が警鐘を鳴らします。どく、どくと心臓の鼓動が大きく響きます。 (……大丈夫、だよな、千秋、) 反射的に、千秋に電話をかけます。

コールを鳴らしてしばらく待ってみますが、千秋は電話に出ませんでした。

染谷千冬 : 「……」 嫌な想像が頭をよぎりますが、慌てて掻き消します。電車が止まるなり飛び出して、必死に走って千秋と別れた駅に向かいます。

あなたは千秋を心配する一心で足を動かした。 慌てて元いた駅へと戻ると、幾重にも反響するサイレンが耳を劈いた。 あなたはそれに構うことなく、改札を抜ける。

先程まで千秋に重ねていた手がひどく物寂しい。 普段ならば感じることのない寂しさが、ざわめきとなって警鐘を鳴らす。 千秋の身に何も起こってなければいいと、それだけを願いながら人の波を縫って階段を駆け上がる。 駅のホームはすすり泣く女の声、囃し騒ぐ高校生、それを止める駅員の声で騒然としていた。

誰かが横殴りにされたのだろう、先頭の方では赤い飛沫が飛び散っている。

染谷千冬 : 被害者が誰かを確認しようとして、人混みを掻き分けます。

一定の所まで来て、駅員に止められます。 「申し訳ありません。この先では事故の処理をしています。関係者以外の立ち入りはどうかご遠慮ください」 目星をどうぞ!

染谷千冬 : CCB<=75 【目星】 (1D100<=75) > 55 > 成功

先頭車両からそう遠くない位置に、スマホが一つ転がっている。あなたはそれに見覚えがあるだろう。

染谷千冬 : (……千秋のスマホが、なんで、あんなところに) 染谷千冬 : 「……離せッ!」 何か言う駅員の声が耳に入らないまま、突き放して現場へ向かおうとします。

12とのSTR対抗どうぞ!

染谷千冬 : ccb<=60 (1D100<=60) > 52 > 成功

駅員を振りほどきました。

染谷千冬 : 事故があったと思われる場所まで、全速力で向かいます。

先頭車両へたどり着くと、電車にぶつかった衝撃で飛ばされたのだろう。顔の無い死体がブルーシートに乗せられていた。折れ曲がった身体は血に塗れていて判断がし辛いが、あなたはその靴から死体の身元が千秋であることが分かるだろう。 その側にはぶつ切りになった左手首がひとつ、転がっている。

千秋が死んでしまった。もう、彼はどこにもいない。

先程まで話していた親しい人の死を知ったあなたは、SAN値チェック1/1d6+1。

染谷千冬 : 1d100<=51 【SAN値チェック】 (1D100<=51) > 69 > 失敗 染谷千冬 : 1d6+1 (1D6+1) > 3[3]+1 > 4 [ 染谷千冬 ] SAN : 51 → 47 染谷千冬 : 「…………?」 現実を受けとめきれません。どうしてこんなことが起こっているのか……いや、起こるはずがない。何かの間違いだ、夢に決まっている――そうやって思考停止しながら、その場に崩れ落ちます。

真っ白になったまま、あなたが呆然と座り込んでいると、後ろから遅れて駅員がやってくる。 駅員に呼びかけられながらも動くことはできなかった。 ぼんやりしながら、あなたはホームの隅で縮こまっている女の言葉を拾だろう。 血をかぶった女は怯えた様子で、駅員に向かって嗚咽を漏らしながら必死に説明をしていた。 「お、男の人がッ、……目の前で、ひっ、突然、っあ、飛び降りてッ……!」 *** 『千冬!』 千秋が呼ぶ声が聞こえる。どこかで、いつも通り少し甘えた声であなたを呼ぶ。 好きだよと囁く声。 笑う千秋の声。 嬉しそうな千秋の声。

それら全ての声が聞こえるのに、ただ、その姿だけがどこにも見つからない。 ────気が付くと、あなたは自宅のリビングで呆然と佇んでいた。 薄っすらと思い出せるのは千秋が自殺したこと、警察に話を聞かれたこと、精神状態を心配されて家に戻されたことだ。 部屋へ目線を向けると、あちこちに千秋の痕跡がある。 二人で買った置物に、千秋が家具につけた傷、お揃いのマグカップに、彼の服。 あなたが今も身に付けている服でさえ、千秋が選んだものだった。 千秋の温もりは今なお息づいているのに、もう彼はこの世にいないのだ。

染谷千冬 : (……そんなわけがない。千秋が死ぬわけがない。絶対に嘘だ。だって、次出かける約束も……バイトが終わったら連絡するって……) 染谷千冬 : (……きっと千秋から連絡がある。迎えに行かないといけない。……それまで、寝よう……) 力なくソファに凭れかけ、天井を見上げながら目を閉じます。心が騒いで全く落ち着かないのを無視して、なんとか意識を落とそうとし、考えることから逃げるように眠りにつきます。

あなたは一人、ソファで目を閉じる。 冷たい布の上、あなたの意識は逃げるように夢へと落ちていく────。 ────あなたは冷たいものが頬に当たる感覚で目を覚ます。 気が付けばそこは眩しいほどに真っ白な部屋だった。 どうやらあなたはその床で眠っていたらしい。 部屋の壁には全面のモニターがあり、白い空間に1人で座る千秋が映っている。 隅には巨大な機械が静かにディスプレイを点滅させている。 そして、中央にはガラスの棺があった。 その中で指を組み沈黙しているのは、千秋だ。 彼はあなたとデートに出かけた姿のまま、ただ静かに目を閉じている。 目が覚めたら奇妙な場所にいたあなたはSAN値チェック0/1。

染谷千冬 : 1d100<=47 【SAN値チェック】 (1D100<=47) > 66 > 失敗 [ 染谷千冬 ] SAN : 47 → 46 染谷千冬 : (……千秋がふたりいる。棺のほうは、まるで死んでるみたいだ。趣味が悪い) 染谷千冬 : (このモニターに映る千秋は、どこにいるんだろう) 「……千秋」 名前を呼んで千秋に聞こえるかどうか、なんとなく試します。

ぼーっと空を見上げていた千秋は、あなたの声であなたに気がついたようだった。ゆっくりと立ち上がり、近づいてくる。

そしてモニター画面に額を押し付けると口をぱくぱくと開閉させる。 その途端、部屋の隅の機械から声が流れ出す。それは、千秋の声だ。

染谷千秋 : 「千冬? どうした~」 染谷千秋 : 「なんだよ変な顔して、大丈夫か?」

そうして千秋は画面に手をのばす。 画面にぶつかった瞬間、一瞬千秋の視線がブレておぼろげになった。

染谷千秋 : 「……? ……あれ。 千冬?」 染谷千冬 : 「……千秋! ……どうした?」 染谷千秋 : 「? 千冬こそ、大丈夫かよ。顔色悪ぃぞ~」

千秋はどうやら画面に触れると思考が阻害されるようだった。 モニターの中で微笑む千秋は、まるで生きているようだ。 やはり事故は夢だったのだろう。

染谷千冬 : (……ほら、やっぱり千秋は生きている) 染谷千冬 : 「……そっちの部屋はどうなっているんだ? 何もないのか? それに今、手を伸ばした時に画面が揺らいだんだが……何かあったか?」 染谷千秋 : 「そっちの部屋? 何のこと?」 染谷千秋 : 「なんだよ、そっちの部屋って。俺の部屋になんかあんのか?」そうして後ろを振り返ります。 染谷千冬 : 「……千秋の部屋? どういうことだ? ……今、俺たちはまた、閉じ込められてるんだよな……?」 染谷千秋 : 「は? ……」そう言ってしばらく困ったような顔をしてから、何もない空間で扉を開ける動作をします。 染谷千秋 : 「……閉じ込められてるって、家に?」 染谷千冬 : 「……千秋は今、家にいるのか? 俺の目では、千秋は白い部屋にいるように見える。……じゃあ、千秋はどうやって俺と会話してるんだ? そっちでは俺はどう見えている?」 染谷千秋 : 「……、俺の目には家にいるように見える。俺は今俺の部屋にいて、千冬もそうだ。会話だって、普通に話してる……んじゃないのか?」 染谷千秋 : 「また何かに巻き込まれたのか、俺達……」 染谷千冬 : 「……俺の意識……と言っていいのかわからないが、それに何か異変が起きているのかもしれないな。……他に調べられそうな場所があるから、調べてみる。すまない、待っていてくれ」 染谷千秋 : 「……わかった。俺の方でも調べてみる」 染谷千冬 : (……それか、千秋の意識に問題があるか。……いや、……) 染谷千冬 : (……千秋が自殺なんて、するわけがない。だからきっと、あれは夢で――いや、これも夢なのか? もう、どこからどこまでが……) 染谷千冬 : (……でも、夢じゃないかもしれない。だから、諦められない。俺は絶対に戻る。千秋と一緒に生きる……) 染谷千冬 : 棺のほうに目を一瞬向けて、すぐに逸らします。 (……このモニターに繋がっている機械、何だ?) 機械のほうへ近づき調べます。

部屋の隅で点滅を繰り返すよく分からない機械だ。 ディスプレイには意味不明な記号の羅列が何万も表示され、ちかちかと光っている。 キーボードやディスプレイはくっついているが、やはり見たこともない機械だ。 アイデアを振ってください。

染谷千冬 : CCB<=80 【アイデア】 (1D100<=80) > 84 > 失敗

機械は、不規則に点滅している。 続けて(コンピューター + 知識)/2を振ってください。

染谷千冬 : ccb<=(21+55)/2 【(コンピューター + 知識) / 2】 (1D100<=38) > 57 > 失敗

難解な機械だと思う。

染谷千冬 : (……見てもわからないな) 染谷千冬 : 棺からなるべく目を逸らしたくて、他に何かないか、部屋を見渡します。

目星をどうぞ!

染谷千冬 : CCB<=75 【目星】 (1D100<=75) > 63 > 成功

特に気になるものはありません。

染谷千冬 : はあ、とため息を零し、棺のほうへ近づきます。……まるで寝る前の事故が嘘ではないことを示すような棺に心がざわめきますが、ここから出るためだと思い意を決します。

ガラスで出来た棺の中には千秋がいる。 彼は指を組み、静かにそこに横たわっている。 あの時に赤い肉片となったはずの彼は、そこにいつもと変わらぬ姿で目を閉じている。 その肌は青白く冷たい。呼吸はなく、少し見るだけでも死んでいると分かるだろう。 目星をどうぞ!

染谷千冬 : CCB<=75 【目星】 (1D100<=75) > 61 > 成功

千切れたはずの手首には、どこにも継ぎ目のようなものが見つからないことに気付く。

染谷千冬 : (……この千秋は、一体……) 染谷千冬 : 棺に蓋のようなものがあれば、それを外して肌に触れたいです。

蓋のようなものはありません。 千秋の肌に触れると、ひどく冷たいことがわかる。そこに生者の温もりは感じられないだろう。

染谷千冬 : (……千秋じゃない、千秋は死んでない。……じゃあ、何だ?) 染谷千冬 : 寝る前の凄惨な記憶から、無意識に手首をなぞります。

あなたがただ立ち尽くしていると、モニターの画面が少しだけ暗くなる。

染谷千秋 : 「……?……千冬?どこ行った?」

千秋の声が聞こえた。 モニターの中の千秋はきょろきょろと辺りを見渡している。 まるであなたが見えなくなったように。

染谷千冬 : 「……千秋、ここにいる。聞こえるか」

千秋は焦りを滲ませた表情で、あなたから遠ざかる。 そんな中、あなたの後ろから低い男性の声が聞こえた。 「お久しぶりです、千冬様」

染谷千冬 : 「……! 誰だ」

振り返れば、そこには長い髪をした白衣の男が立っていた。 「私のことは、……崔とでもお呼びください。大変混乱なさっているようですね」 彼はあなたを見てから、そっと棺の中の千秋に視線を移す。 「まずはご説明をさせていただきます」 彼は冷静すぎるほど冷静にそう告げると、あなたを見つめた。 「まず、千秋様はそちらの世界では既に死んでおります。千秋様は死ぬことにより、その魂を生き神として昇華させることに成功しました」

染谷千冬 : 「……は?」 染谷千冬 : (……千秋が死んでいるだなんて、簡単に。……いや違う、そこじゃない。聞くべきは、何が関わっているか……) 「……生き神、とは何だ」

「ある災厄を封じるための生贄……とでも申しましょうか。 千秋様が死んだ駅、あそこには死の災厄が振りまかれておりました。あの駅を通化した人間は、しばらくすると皆死を迎えます。そして死んだ人が新たな厄災への道となり、いずれ全人類が死に滅んでしまう、という厄災です。 そのままでは人類を含め、生きとし生けるもの全てが死を迎えてしまう。私達はその道を塞ぐ必要があると考えました」 「永久に道を閉じる役目を負う者、……それが生き神でございます」

染谷千冬 : 「ふ……ふざけるな。どうして千秋にそんなことを……! 千秋を返せ……ッ!」

「千秋様が望んだことでございます。道を閉じるのには最適な魂が必要でした。私達は千秋様と対話をし、生き神となることを了承していただきました」

染谷千冬 : (……今までにも色々あったが、この言い方、心当たりがない。……それにしても、千秋が望んだ……!?) 染谷千冬 : 「……久しぶりと言ったな。前にどこで会った」

「以前お会いしたのは、今と同じ夢の世界です。私達が千冬様をお呼び出てしました。……覚えていらっしゃらないようですね」

染谷千冬 : 「……千秋に死んでほしくない。俺にできることは何でもする。俺が生き神になってもいい。だから、千秋だけは助けてくれ……!」

「既に災厄を封じるために千秋様の魂を使っています。千冬様の魂はもう使えません。……ですが、千冬様と千秋様が想い合っていることを存じ上げております。ですので、せめて千冬様に千秋様を返そうと思います。 千秋様の身体は破片含めて全て我々が繋ぎ合わせ修復しました。 あのモニターの中にいるのは千秋様の人格を完全にコピーした人工知能です。これを千秋様の身体に入れれば、千秋様は以前と変わりなく復活するでしょう」

染谷千冬 : 「は、……」言葉を失います。 染谷千冬 : 「……そ、それ以外に何か……」

「……こちらをご覧下さい」 ぷつりと画面が切り替わる。 彷徨う千秋の姿が消え、どこか温かい光に照らされた広い部屋の様子が映し出された。 その中心、柔らかそうなベッドの上でアルバムを抱えているのは千秋だ。 その顔は影になっており良く見えない。その手は静かにアルバムを捲り、写真をなぞっている。 「こちらが、千秋様です。 千秋様は既に人ではありません。あちらの世界で永遠に、こうして生きることとなっております。 あの部屋には用意出来る限りの全てをご用意しました。 ほしいものはほしいだけ、飢えも乾きもございません。たった一人きり、外に出られない、接触できないということさえ除けば快適な環境です。 千秋様に不自由はさせますが、苦しませることは決してしません。お約束します」 目星をどうぞ。

染谷千冬 : CCB<=75 【目星】 (1D100<=75) > 25 > 成功

千秋の捲るアルバム、そこにはあなたの写真が何枚も載っていた。 楽しそうに笑うあなた、眠るあなた、千秋と共に生きるあなた。そこにはただ幸福なあなたの写真が何枚も何枚も載っていた。 千秋はそれをただただ眺めている。 ぶつり、とモニターの表示が変わる。そこには先程と同じように白い空間に佇む千秋がいる。 「そこの人工知能をこの身体に移します。これにより、千秋様は蘇るでしょう。 あなた様はその千秋様を持ち帰り、全てを忘れて幸せに暮らして下さい。身体は完璧に修復してあります。本来の千秋様の寿命を全うできるでしょう。そちらの世界では、千秋様の死はなかったことになります」

染谷千冬 : 「……違う、認められるわけない。人工知能は人工知能だ。千秋とは別だ……!」

白衣の男はあなたの返事に首を傾げた。 「おや、何故ですか? 記憶も、発言も、思考回路も千秋様と同一のものでございます」

染谷千冬 : 「……オリジナルとコピーが同一だと思うのか? じゃあ、その生き神とやらに人工知能を使えばいいだろう。……俺は元の千秋が良い。どれだけ完璧な人工知能でも、それは模倣をしたものだ。千秋じゃない……」

「……そうですか、わかりました」 白衣の男は難なくそういうと、モニターのない壁に触れた。 すると音もなくその壁に扉が現れる。鉄でできた何の変哲もないよくある扉だ。 「千秋様を取り戻す方法はあります。千冬様がおっしゃった通り、人工知能を身代わりにすれば良いのです。 人工知能を魂の代わりにするにはほんの少しの『喜び』と極上の『苦しみ』が必要です。 千冬様がいるだけで喜びは達成されます。ですから、あとは苦しみを与えればいいのです。千冬様が人工知能を拷問することで、それは達成されます。

扉の奥に進めば人工知能を魂の代わりにするための準備があり、最奥には千秋様の魂がいます。 最後にその千秋様の魂と人工知能を入れ替えれば良いでしょう。千秋様を取り戻すことができます。 人工知能に苦しみを与えれば与えるほどに、魂の代わりへとなりやすくなります。できるだけ冷たく接してください。 千冬様からの拷問は千秋様にとって耐え難い苦痛でしょう。その苦しみは人工知能を魂の代わりへと昇華させます」 「構わないでしょう?あの人工知能は千秋様ではないのですから」

染谷千冬 : 「……構わない、が。確認したいことがある」

「なんでしょう?」

染谷千冬 : 「他に千秋を助ける方法はないのか。今みたいに、後から提示されるのはごめんだ。……それと、できればモニターの千秋が人工知能である保証がほしい。確認できるものは何かないのか」

「千秋様を救う方法は他にはございません。あれが人工知能である保証は、あれが現状を正しく認識できないのが証明とでも申しましょうか。それが証明にならないというのなら、我々を信じていただくしかありません」

染谷千冬 : (……少しでも情報が得られたなら十分だ。元より、この方法を信じるしかない。人工知能を体に移すのも、千秋が死んだままなのもあり得ない、から) 染谷千冬 : 「……わかった。やろう」

「わかりました。 それと、人工知能に事情を話してはなりません。 自身が人工知能であることを知れば、あれは発狂して使い物にならなくなるでしょう。 また、人工知能には自分が人工知能であることを悟らないよう、プログラムを組んでいます。 そのため、あなたが人工知能であることを告げなければ、彼が知ることはありません」

染谷千冬 : 「ああ、わかった。他に注意することはあるか。なければ人工知能のところに連れていけ」

「ありません。では、行ってください」

男は扉を指し示す。 その瞬間、ぶつんとモニターが暗転し千秋の姿が消える。

「人工知能はあちらに送っておきました。 あぁ、あの人工知能は死にません。なのでお好きなだけ痛めつけてください。 さぁ、千秋様を取り返しましょう」

染谷千冬 : (……最後の言葉、まるで意図していたかのようで違和感があるが。……まあいい。この男の言うことに従うしかないんだ) 「……ああ」

あなたがその扉をくぐると、そこは真っ黒な空間だった。 光を忘れたようなその場所を、あなたは手探りで進んでいく。そしてこつんと、どこかの床を踏んだ瞬間、視界が変わった。

真っ白な部屋の中にあなたと、そして隣には千秋が立っている。 いつも通りの、あなたの大切な人千秋と同じ見た目だ。 その手には手錠がかけられており、身体の前の方で拘束されている。

この丸い部屋にはひとつの扉があるだけだ。床に引かれたタイルがどこか手術室を連想させる。 千秋はあなたを見ると焦りながらも口を開いた。

染谷千秋(人工知能) : 「千冬、大丈夫か?! さっき突然姿が見えなくなって、……?」 染谷千秋(人工知能) : 「クソ、ん、……なんだこれ。 いつの間に……、」

彼がいつもの声であなたに問いかけた瞬間、あなたの視界にぴこんと灰色のディスプレイが浮かんだ。 そのディスプレイにはただ『手順1:これを思い切り殴る』と書いてあった。 空中に浮かぶそれは千秋には見えていないようで、千秋はあなたを見つめている。 s1d3+2 (1D3+2) > 1[1]+2 > 3

染谷千冬 : (この手順表示……やっぱりさっきの男にとって、『実験』みたいなものじゃないのか。……ふん) 千秋のほうに向きなおって、殴ります。 染谷千秋(人工知能) : 「ッ、」

あなたに頬を殴打された千秋は後ろへ倒れ込み、驚いたようにあなたを見上げる。 信じられないというよりは、何が起こったのか分からないというような目で。 その頬は赤く腫れている。他でもないあなたの手によって。 あなたは千秋と同じ見た目をして、同じ思考を持つそれを、確かにその手で、自分の意思で傷つけた。 SAN値チェック1/1d4。

染谷千冬 : 1d100<=46 【SAN値チェック】 (1D100<=46) > 31 > 成功 [ 染谷千冬 ] SAN : 46 → 45

……ディスプレイの文字はまだ消えない。

染谷千秋(人工知能) : 「…………、千冬?」 染谷千冬 : 殴り続けます。何度も何度も。 (――これは人工知能であって、千秋じゃない。傷つけたって、千秋と関係ない)

拳を振るう。何度も、何度も。そのうちかちゃりと音がして、気が付くと部屋にあった扉が開いていた。

腫れた頬、切れた唇から赤い血が滴り落ちた。千秋は咳き込みながら、戸惑ったようにあなたを見上げている。

染谷千秋(人工知能) : 「千冬……、だよな?」 染谷千冬 : 「ああ」 (……扉が開いた。扉の先に何かあるのか?) 染谷千秋(人工知能) : 「……。誰かに指示されてるのか?」 染谷千秋(人工知能) : 「この部屋のこと、何か知ってるんだろ」 染谷千冬 : (……面倒だな。手順は書いてあるが……さっきの話なら、『苦しみを与えること』が目的なんだろう。なら、それに沿えばいい。……『千秋』が悲しむことを考えて、実行するだけだ) 染谷千冬 : 目の前の千秋を蹴ります。 「ああ、調べてわかった。……千秋は邪魔だ」 染谷千冬 : 倒れこんだ千秋の服を掴んで、殴ります。 染谷千秋(人工知能) : 「う゛っ」無抵抗のまま殴られます。 染谷千秋(人工知能) : 「っはは、邪魔だって?」殴られながら聞き返します。 染谷千冬 : (……あの時、千秋は何て言ってたか。……) 染谷千冬 : 「……千秋がいるから、こんな目に遭う。千秋がいるから、俺が死ぬ羽目になる。もうこりごりだ。千秋さえいなければいい」 染谷千秋(人工知能) : 「……」 染谷千冬 : 「……」 掴んでいた千秋を突き放して、地面に倒れたところを蹴り上げます。 扉のほうに向かいます。 染谷千秋(人工知能) : 暴力を受けて咳き込んでいます。

扉の向こう側をみると、その部屋には先程の部屋と同じように扉が一枚あるだけだ。

染谷千冬 : (移動したら次の指示が出るということか? 手間だな……) 千秋のところに戻って、首根っこを掴み、隣の部屋まで引きずろうとします。

千秋は呻きながら引きずられていきます。

染谷千秋(人工知能) : 「っは……、俺のこと見くびんなよ」咳き込みながら言います。 染谷千秋(人工知能) : 「千冬が本気でそう思ってたら、こんなことしないで俺の前から姿を消してるはずだろ」 染谷千秋(人工知能) : 「……やらなきゃいけないことなんだな、これ」 染谷千冬 : 「そう信じたいなら、思っていればいい。……」 染谷千冬 : 「……姿を消す前に、これだ。千秋と離れたくても、離れようと思っても、離れられない。まるで運命みたいに、わけのわからないことに巻き込まれる。……もう疲れた。千秋なんていないほうがいい。ここで終わりにする」 染谷千秋(人工知能) : 「そーかよ」

扉を潜るとその扉は泡のように溶け消える。これで後戻りは出来なくなった。 部屋にはやはり、先程の部屋と同じように扉が一枚あるだけだ。 悪夢のように白いタイル貼りの床がやけに不吉に思えた。 痛みに顔を歪めつつも千秋は扉を見つめ、そして少し考え込んでからあなたを見やる。 その視線に答えるようにあなたの視界にディスプレイが現れる。

『手順2:これの左手、または右手の指の骨を折る』 灰色のディスプレイにははっきりとそう表示されていた。

染谷千冬 : (……骨か。踏みつけるのが楽なんだろうか) 引きずった千秋を床に放り捨て、投げ出された手に向かって足を振り下ろします。 染谷千秋(人工知能) : 「……、ッ!」

悲鳴を噛み殺し、千秋は拳を握りしめた。そこにあなたは足を振り下ろす。繰り返してみるも、扉が開く様子はない。

染谷千冬 : (……なんで開かないんだ? 折れてないのか? ……あんまり執拗に狙うと、目的がばれる可能性がある。いや、ばれていいのだろうか。……これからの手順内容によるが、伏せられるうちは伏せたほうがいいか。……ああ、もしくは何か見落としている?) あたりを見回します。

目星をどうぞ!

染谷千冬 : CCB<=75 【目星】 (1D100<=75) > 5 > 決定的成功/スペシャル

痛みで固く握りしめているからか、千秋の指は折れていないことがわかる。

染谷千冬 : (……意識を飛ばしたほうが、骨を折るなら楽だな。千秋は今、俺のことを疑っている。一ヶ所を狙って不自然な行動に見えるよりは、なるべく自然に進めたい) 頭をめがけて蹴ります。意識を失わなければ何度も、腹や腕など他の部位を交えて目的がバレないようにしながら。 染谷千秋(人工知能) : 「うっ、っぐ、あ……!」ただ暴力に耐えます。

千秋の身体に蹴りを入れていく。あなたの足が身体に当たるたびに、千秋は身体を跳ねさせる。鈍い打撃音がなり、度重なる暴力を受け続けてとうとう千秋の身体から力が抜けた。どうやら意識が飛んだらしい。 その横にディスプレイが現れる。 『苦痛を与えるため、起こしてください』 そしてばしゃんと音がした。 隣を見れば、使えと言わんばかりに氷水の入ったバケツが置かれている。 水は青く澄んでおり、指を入れれば肌が割れそうな程に冷えきっている。

染谷千冬 : (わかってる。……先に骨を折っておけば、そっちの手には力を入れづらくなるはずだ。先に折っておいて、それでこの指示が達成された扱いにならなかったら、他の指を折ろう) 染谷千冬 : 意識が落ちて力の抜けた手のひらに向かって、もう一度、足を振り下ろします。

ごき、と音を立てて、指が本来ならありえない方向へと折れ曲がる。千秋は意識を失ったままだ。

染谷千冬 : バケツを手に取って冷水を浴びせます。 染谷千秋(人工知能) : 「! ……、う……」びく、と一度痙攣し、ゆっくりと目を覚まします。 染谷千冬 : 「……寝るな」 床に落ちている、先ほど折った手をもう一度踏み潰します。ぎりぎりと床に擦りつけます。 染谷千秋(人工知能) : 「うあぁ!、いッ……」指を動かすこともできず、痛みに呻くことしかできません。

千秋は痛みで拳に力を入れることができないようだった。踏みつけた衝撃でその他の指もべきりと折れていく。指がだらんと落ちる。指は果実のように赤く腫れ、指先が不自然な方向を指している。 白い指はぴくぴくと時折奇妙な痙攣を繰り返し、その度に千秋は眉を顰めて浅い呼吸を繰り返す。

彼はただ痛みに喉を引き攣らせ、あなたを見ている。 こぼれるうめき声も、その目も、全て千秋と同じだ。 大切な人と同じ身体を傷つけ、同じ指の骨を自身の手で折った。

SAN値チェック1/1d2+1。

染谷千冬 : 1d100<=45 【SAN値チェック】 (1D100<=45) > 69 > 失敗 染谷千冬 : 1d2+1 (1D2+1) > 1[1]+1 > 2 [ 染谷千冬 ] SAN : 45 → 43

そんな彼の横で、がちゃりと扉が開いた。

染谷千冬 : (……人工知能、でも、千秋の人格を完全にコピーして……いや、) 思考を止めて、千秋を掴んで隣の部屋へ移動します。

新しく開いたその扉に千秋を引きずって入る。潜るとその扉は溶けるように消えた。 部屋の中央にはノートと鉄パイプがある。 視界の隅に、またあのディスプレイが現れた。

『手順3:鉄パイプを使ってこれを痛めつける』

染谷千秋(人工知能) : 「……、は、?」中央にある道具を見た千秋が、ひどく狼狽したような声を出す。 染谷千秋(人工知能) : 「これ、千冬が用意したのか……?」 染谷千秋(人工知能) : (なんで、……俺しか知らないはずだろ……) 染谷千冬 : (……なんだ、このノートは) 鉄パイプを右手に持って、もう片方の手でノートを開きます。

左手にノートを持ってパラパラとめくる。 そのノートは、誰かの日記のようだった。 文字が掠れていてほとんど判別がつかないが、ところどころに「罪」という文字が見える。

染谷千冬 : (……内容は分からないが、千秋は知ってるみたいだな。……千秋が隠していることは、母親のこと、母親についての記憶が欠けていること、俺が千秋のために自殺をしたこと……他にもあるかもしれないが、これらは確実だ。それと関係がある?) 染谷千冬 : (……どうして千秋は俺に黙っているのか。考えられる理由は何だろう。……俺を傷つけないため、俺を守るため、自分が軽蔑されたくないため、言えなくなる制限があるため? ……千秋が隠していることを、無理やり触れるのは申し訳ないが……でも、千秋を苦しめるために、俺の行動を疑われないためになるべく立ち回らなければいけない。だから、不用意なことを言って、ノートの内容と発言に矛盾が生まれたらまずい。……) 染谷千冬 : (……これまでの会話から生まれても不自然ではないような、けれどもしかしたらノートに書かれていることと一致するような話。 千秋が俺に隠していることの中で、俺が千秋のために自殺したこと、これについてはさっきも言った。他には……母親のこと、千秋が自分のせいだと思っていること、俺のために黙っているかもしれないことを絡めて……) 染谷千冬 : ノートをぱらぱらとめくり終えた後、千秋のほうを見下ろしながら言います。 「……俺はこんなこと望んでいなかった。……母親も、俺も、全部。……千秋のせいだ。……そうだろ」 染谷千秋(人工知能) : (あれは……かなり古いけど、俺の日記だ。あの日記を用意したのは誰だ?何でここにある。燃やしたから、もうないはずなのに。 千冬が用意したのか?それとも協力者がいる? 千冬は日記の内容をどこまで知ってるんだ。いや、思い出してるのか?前に話した時は全部思い出していないようだったけど、……今は?全部知ってるのか。俺がやったこと……。 日記を目の前で見せつけるように読んだ、けど、どれだけ知ってるか確認する必要があるな……) 染谷千秋(人工知能) : 「……何のことだよ」 染谷千冬 : (……探られている。そうか、この行動についてのほかに、俺についても疑いを持っているのか。俺がこの千秋を人工知能だと――千秋じゃないと思っているように。……もう少しこちらから情報を示せればいいが、俺について疑われている以上、間違ったことを言ってしまった時には……俺が俺じゃないと完全に判断された時には、目的を達成できない。取り返しのつかないことになる) 染谷千冬 : (……このノートは日記のようだ。ところどころにあった『罪』の文字。……その文字は千秋が書いたかもしれない。掠れていて読めなくなっているが……いや、そもそも中身はすり替えられていたり、俺と千秋が見ているものが同一ではない可能性がある。……ただ、もしノートが同一だった場合――千秋がその言葉を書いた場合――この言葉を出せば、千秋の疑いを晴らせるかもしれない。断定はできない、だから会話として不自然ではないように、でももしノートに書いていたのなら、そのことと結びつけられるような言い方……) 染谷千冬 : 「……しらばっくれるのか。そうやって、さらに罪を重ねる。愚かだな。……千秋がそんな人間だと思わなかった。もう、嫌いだ。だから千秋は、もう要らない」 染谷千冬 : (……千秋。こんな言葉は嘘だ。俺は千秋がどんな罪を抱えていたとしても、その時は一緒に背負う。俺が千秋を嫌いになんてなるわけがない。本当は、こんなことを言う俺のことは疑うべきなんだ。千秋が自分のことを追い詰める必要なんてない。……ごめん、千秋……) 染谷千秋(人工知能) : (この千冬は本物なのか?怪異の力で作られた偽物……、幻覚、人形、俺の記憶から作られたものの可能性がある。もしこれが本物の千冬じゃなかったら……、……じゃなかったら、なんだ? ……偽物が本当の千冬と同じ思考回路を持つなら、いつか本当にバレた時も同じことが起こる。目の前の千冬が本物か偽物かなんて関係ない。偽物だから千冬の言葉を無視するなんて、一時的な現実逃避にすぎない。これも、起こりうる可能性の一つなんだ。……いや、現に起こってるのか。 ……1つ目の部屋で、千冬は次の部屋に何があるかを確認していた。 この千冬がこの部屋と共に用意された千冬なら、内部構造を知ってるべきだ。 なら、この部屋を用意したのは千冬じゃない。だから、きっとこの千冬は……本物だ) 染谷千秋(人工知能) : (千冬が俺にこんなことすんのは、やむを得ない事情があるんだと思ってた。洗脳か脅しかはわかんねぇけど……、ずっと一緒にいようって、千冬から言ってくれたんだ。だから、こんな行動してるのも二人で出てくためだと思ってた。 ……けどもしあのことが知られてて、本当に俺を消したいんだと思ったんなら……。……本当なら、千冬はこんなこと、……拷問なんてことはしないはずなんだ。だけど、俺が追い詰めた。千冬を。俺が千冬から離れないから、こうするしかなかったんだ、きっと。 わかってる。父さんも、母さんも、千冬がここにいるのも、全部俺のせいだ。 ……邪魔……、邪魔か。そうだろうな。俺が生まれて、千冬は両親を亡くした。周りから人がいなくなったのも、俺のせいだ。怪異現象に巻き込まれ始めたのも、俺が過去に戻って捻じ曲げてからだ。千冬が知らずにいたから俺達は……。……それを知らずにいたのに、この日記を読んで知ったんだ。 結局、俺は……) 染谷千秋(人工知能) : 「……」黙ったままうつむきます。 染谷千冬 : 「……」黙った千秋に対して、右手に持つ鉄パイプを横に振りきって殴ります。 染谷千秋(人工知能) : 「ッ」殴られた衝撃で横に倒れます。 染谷千秋(人工知能) : 「う゛……っ、ぐ、……、……はは、……そっか」呻きながら弱々しく笑います。 染谷千秋(人工知能) : 「さっきの、言葉、……本当なんだな……」倒れたまま、虚ろな目で呟きます。 染谷千冬 : 「……」 (本当なんかじゃない、千秋……) 染谷千冬 : (……俺は、何をしているんだろう。この人工知能は、千秋の思考をトレースしている。だから、本当の千秋もこうやって、罪の意識を抱えていて、自分を責めるんだ。……千秋には苦しまないでいてほしいのに、千秋がそうやって思うなら俺が救いたいのに、でも、それができていないから。俺が千秋の心に寄り添えていないから……) 染谷千冬 : 思考から逃げたくて、早く終わらせようと鉄パイプを何度も振りかざし、千秋に打ちつけます。 染谷千秋(人工知能) : 「あッ……、は……、ッ……」痛みで指一本動かすこともできず、その場に転がることしかできません。

床に転がるのはあなたの手により傷つけられた千秋。違う、これは千秋ではない────。 だが、血の中で痛みに耐えるその反応も。全てあなたの知る千秋と同じだ。当たり前だ。 同じ思考があり、同じ感情を持っているのだから。 SAN値チェック1/1d3。

染谷千冬 : 1d100<=43 【SAN値チェック】 (1D100<=43) > 63 > 失敗 染谷千冬 : 1d3 (1D3) > 1 [ 染谷千冬 ] SAN : 43 → 42

血に汚れる彼の横で、がちゃりと扉が開いた。 まだ、この儀式は続くのだろうか。

染谷千冬 : 「……」 また千秋の服の襟部分を掴んで、隣の部屋まで引きずっていきます。

千秋と似たものを引きずりながら、覚悟を決めて扉を潜る。その部屋はやはり白いタイルの、手術室のような部屋だ。 その中央には、銀の光を刃から零すのこぎりがあった。その隣には薬品の入った注射器がある。 その横に、ディスプレイが現れた。

『手順4:これのどちらかの脚を切り落とす』

千秋はそれらをみて、ここで何が行われるか悟ったようだった。

染谷千秋(人工知能) : 「……なぁ、これが、……終わったら、……こんな部屋用意したやつとは、縁、切れよ……」痛みで意識を朦朧とさせながら言います。 染谷千秋(人工知能) : 「そんで……こんな街出るんだ。変なものだらけの街なんか、……捨てて、どこか遠くにいって……、…………、そこで暮らせよ」 染谷千冬 : 「……」その言葉には答えません。 (……千秋がここからふたりで出るための行為だと思わないように、目的が透けて見えないように、そう振る舞っていたんだったか。……それが通じる域じゃないな。もう、いいか。なら早く、終わらせよう……) 染谷千冬 : 注射を持って適当な箇所に打ちます。その後のこぎりを持って右足の付け根に押し当て、力強く引いて押してを繰り返します。

注射器には透明な、光によっては青にも赤にも見えるおかしな薬品が入っていた。 ラベルが貼られており、そこには『麻痺毒それが抵抗した時にどうぞ』と書いてある。

あなたはそれを彼の皮膚に突き刺し、注射する。

染谷千秋(人工知能) : 「! ッ……、ひゅ、……っ」

その瞬間、彼は全身をがくがくと痙攣させ倒れ込んだ。 こひゅー、こひゅーと喉がなり口の端からよだれが垂れる。目は血走っておりあちこちの血管が浮いていた。 苦しみに悶えることも出来ない彼を見たあなたはSAN値チェック1/1d4。 アイデアどうぞ。

染谷千冬 : 1d100<=42 【SAN値チェック】 (1D100<=42) > 69 > 失敗 染谷千冬 : 1d4 (1D4) > 1 [ 染谷千冬 ] SAN : 42 → 41 染谷千冬 : CCB<=80 【アイデア】 (1D100<=80) > 6 > スペシャル

麻痺毒がその名の通り麻痺させる毒なのだとしたら、呼吸器官や心臓などといった臓器も麻痺しているのでは?と思う。

染谷千秋(人工知能) : 「────────ぁ、っ、うっ、あ゛ぁ!!」

彼の脚にずぶりとのこぎりが刺さった。のこぎりを引くと噛み殺しきれなかった悲鳴が響き渡る。 その声はあなたの鼓膜をふるわせ、脳をがくがくと揺らした。

のこぎりを引く。 柔らかな手応えと共に鮮血が舞い、ぶちぶちと筋肉繊維のちぎれる振動が手に伝わった。 その足に赤い切れ込みが入る。ぱっくりと切れた肉の切れ目が見えた。白い骨がちらりと覗いている。 千秋はCON*1、千冬はSTR*3を振ってください。

染谷千秋(人工知能) : CCB<=10*1 【CON × 1】 (1D100<=10) > 16 > 失敗 染谷千冬 : CCB<=14*3 【STR × 3】 (1D100<=42) > 49 > 失敗

CONに失敗した千秋は痛みのあまり気絶してしまうだろう。 STRに失敗した千冬は、足の切断に時間がかかってしまうだろう。 気付くと千秋は意識を失っていた。 その肌は和紙のように白い。息は荒く、ぼたぼたと汗が頬から落ちていた。 彼の横にディスプレイが現れる。

『もう一度起こしてください』

そしてばしゃんと音がした。 隣を見れば、先程置かれていたバケツに水が並々注がれていた。水は青く澄んでいる。

染谷千冬 : (……麻痺毒なのに。言っていた通り、死なないようにできてるんだな) バケツを手に取り、また千秋に冷水をかぶせます。

冷水をかけられても、千秋が起きる様子はない。 深く意識を飛ばしてるようだ。 水がもう一度バケツに注がれる。

『起こすまで繰り返してください』

染谷千冬 : バケツの水を浴びせます。起きるまで。

並々注がれた冷水を繰り返し浴びせると、すぐに血がまじった水たまりが床にできる。 あなたの服に、靴に冷水が飛び散る。触れるだけで肌が割れそうだ。 しばらくして、千秋が咳き込み始めた。起きたようだ。

染谷千秋(人工知能) : 「……、……?」ぼんやりと目を開けます。 染谷千冬 : 切断しかけているところにのこぎりを再び差し込み、力を入れて引きます。 染谷千秋(人工知能) : 「~~ッッ!!うあ゛ッ、……!い゛ッ、~~~~ッッ!!」

千秋の悲鳴が部屋に響く。 しばらくして、ごとん、と脚が落ちた。 その瞬間、かちゃりと扉が開いた。

タイルの上に転がるのは、先程まで千秋の足だった肉塊。肺に入り込む酷い鉄の匂いに頭痛がした。 赤い赤い、血に濡れた切断面がてらてらと光る。鮮血は瞬く間に拡がっていく。 血液と共に体温も流れ出しているのか、千秋は荒い呼吸を繰り返しながら歯をがちがちと鳴らした。

意識を失っても、それこそ死んでもおかしくないはずなのに。 千秋に死は許されない。痛めつけられ、傷つけられることしか彼には許されないのだ。 痛みに耐え続けるその姿は、あなたの大切な千秋と何も変わらない。SAN値チェック1/1d4。

染谷千冬 : 1d100<=41 【SAN値チェック】 (1D100<=41) > 36 > 成功 [ 染谷千冬 ] SAN : 41 → 40 染谷千冬 : 慣れたように、服を掴んで引きずりながら次の部屋へ移動します。

慣れた手付きで千秋を引きずったまま、あなたは扉を潜る。あなたが進むたびに、後を追うように血の道ができる。 扉に潜ると先程までと同じように消えた。 新たな部屋はやはり手術室のようで、部屋の隅にぽつんと新たな扉がある。 その部屋の中央には拘束具のついた手術台のようなものがあり、隣にある金属製の机には生々しくつやめく人間を痛めつけるために作られたいくつもの拷問具たち、『媚薬』『毒』『麻痺毒』などと書かれた薬品瓶が置いてあった。 まるで、拷問しろと言わんばかりだ。

染谷千秋(人工知能) : 「……、……、戸塚組を、名乗るヤツらが……千冬の前に現れたら、俺はもう、いないって……、伝えてくれ」 染谷千秋(人工知能) : 「指定暴力団の、二次団体だ……。カタギには、手を出さないから、千冬はきっと、大丈夫だ……」 染谷千秋(人工知能) : 「けど、もし、しつこいようなら、……俺の机、の……、引き出し、二段構造になってる……、そこにある金を渡せば……、しばらくは……、大丈夫」

ぴこんと、視界にディスプレイが現れる。

『手順5:これが一番苦しむことをする。言葉でも行動でも構いません』

染谷千冬 : (……暴力団? どういうことだ? ……千秋は何と関わっている? 俺が知らないうちに、もしかして千秋はとんでもないことを……) 染谷千冬 : (……俺はいつだって、千秋の力にはなれないんだな) 染谷千冬 : (……俺がどれだけ酷いことをしても、千秋は俺のことを気遣っている。……) 染谷千冬 : 「……もううんざりだ。隠しごとばっかりで、信用できない。俺が馬鹿だった。ずっと千秋のことを勘違いしていた。嫌いだ、大嫌いだ。俺たちは出会わないほうが良かった。千秋なんて、生まれないほうが良かった」 染谷千秋(人工知能) : 「……そうだな」 染谷千秋(人工知能) : 「……ごめん。怪異現象に巻き込まれ始めたのも、きっと俺のせいだ」 染谷千秋(人工知能) : 「……俺は、千冬を苦しめてばっかりだ」 染谷千秋(人工知能) : 「俺がいたから、俺のせいで……」そう言って沈黙します。 染谷千冬 : (……そんなわけないのに、千秋は関係ないのに、千秋が俺を苦しめるわけないのに……) 染谷千冬 : 「……ずっと千秋のことが好きだった。あの日、千秋と想いが通じていたことが分かって、夢みたいだった。……でも、俺は千秋のことを何も分かっていなかった。何が幸せだ、これが幸せなわけない。何も知らないで千秋と過ごした日々……一緒に色んな場所へ出かけたこと、同じ布団で寝転がって過ごしたこと。……これからもずっと、一緒にいようって誓ったこと。……全部、後悔だ」 染谷千秋(人工知能) : 「……。……、……っはは!」 染谷千秋(人工知能) : 「はは、ははは、……ふ、はは!ははは!」 染谷千秋(人工知能) : 「ははは、は……、……やっぱ」 染谷千秋(人工知能) : 「やっぱ、隠して正解だった……」

かちゃりと音がなる。扉が開いたらしい。 千秋は虚ろな瞳で笑っている。 あなたは終えた。 大切な、大切な千秋に最も言ってはいけないことをこの千秋と同じものにやり終えたのだ。 ……いや、違う。これは千秋ではないのだ。 それなのにその目は、その呼吸は、どうしたって千秋と同じだ。あなたの大切な千秋と、同じなのだ。 SAN値チェック1/1d6+1。

染谷千冬 : 1d100<=40 【SAN値チェック】 (1D100<=40) > 8 > 成功 [ 染谷千冬 ] SAN : 40 → 39 染谷千冬 : (……) 染谷千冬 : 震える手に何とか力をこめて、次の部屋へ引きずっていきます。

なんとか力をこめて、扉を潜る。 その先にあったのは、あの無機質な白い部屋ではない。 優しい光によりほのかに照らされた広い部屋だった。

どこからか綺麗なオルゴールの音が流れ、落ち着いた花の香りがする。 部屋の中央には天蓋のついた大きくて柔らかなベッドがあり、そこにはうつ伏せで眠る千秋がいた。 安らかな寝息を立てる彼の腕は、あなたの写真が収められたアルバムをしっかりと抱いている。

染谷千秋(人工知能) : 「……、は?」

あなたの隣にいる千秋が、いや、人工知能が信じられないと言ったような声を上げた。 ぴこんと、ディスプレイが現れる。

『お疲れ様でした』 『それを置いて、今、入ってきた扉から千秋様を連れて帰ってきてください』 『あなたが選んだ方でないと扉は潜れません。それが逃げ出すことは出来無いのでご安心を』

染谷千冬 : 引きずっていた人工知能の千秋を床に放り捨て、ベッドに横たわる千秋のほうに向かいます。 染谷千秋(人工知能) : 「っう……、ッ、おい!」床に倒れたまま、ベッドの方に這いずっていこうとします。利き手と片足が潰れている上、麻痺毒を打たれているので進みはとても遅いです。 染谷千冬 : ベッドに横たわる千秋の足に腕を差し入れ、もう片腕で背中を支えます。そして床の人工知能には目もくれず、来た扉へ戻ります。

あなたは眠る千秋を抱き上げる。それは、彼と帰るためだ。 あなたが誰より愛した人は、隣で呆然と佇む人工知能などではなく、間違いなくこの人なのだから。

染谷千秋(人工知能) : 「……千、冬!」

『人工知能』があなたを見る。彼と全く同じで、ただあなたが選ばなかった彼が。 扉の方に歩いていくあなたに彼が縋り付くように手を伸ばす。

染谷千秋(人工知能) : 「何だよ、それ?!俺のことが憎いんじゃないのか?!」 染谷千秋(人工知能) : 「何で俺がそこにいるんだよ、ッ……、おい!答えろよ!」 染谷千冬 : 「……」それを気にも留めず、扉の先へ行きます。 染谷千秋(人工知能) : 「おい、どこ行くんだ、おい!」

震えるその声は、確かな絶望に溺れていた。 あなたを見る目は暗く、その手はぎゅっとあなたの脚に縋り付く。

染谷千秋(人工知能) : 「なあ、待て、ッ、待てって……」 染谷千冬 : 「離せ」足を大きく動かして振り払います。 染谷千秋(人工知能) : 「うッ」

あなたはその手を振り払う。掴まれていたら、前へと進めないから。 彼は置いていくと、そう決めたのだから。 振り払われてよろけた千秋が白い壁にぶつかってうめき声を漏らした。

染谷千秋(人工知能) : 「待てよ、……千冬!」 染谷千秋(人工知能) : 「俺を!置いてくな!!」 染谷千秋(人工知能) : 「千冬!!」

扉を開けて、その奥へとあなたは踏み出す。 あなたは置いていくのだ。 千秋と同じ容姿、同じ思考、同じ人格、同じ心を持った彼を。あなたを愛する彼を。 たった一人、あなたの愛した人のために利用して、殴って、壊して、踏みにじって。 ここで永遠に一人きり、置いていくのだ。

全ては純愛、故に。全ては千秋のために。 目の前には真っ暗な道が続いている。 後ろにある扉が、ゆっくりと閉まっていく。脚のない人工知能はあなたを追いかけることなどできない。 扉の隙間から見える千秋の目が、あなたの抱く千秋を捉えた。

染谷千秋(人工知能) : 「……ふざけんな!」 染谷千秋(人工知能) : 「お前が! お前だけが幸せになるなんて許さない! 俺の方が千冬を愛してるのに!!」 染谷千秋(人工知能) : 「その場所は俺のものだ!!」 染谷千秋(人工知能) : 「ッ、許さねーからな!! 死ね、死ねよ! 千秋!!」

憎悪、怨嗟、殺意を漲らせた人工知能の絶叫が聞こえる。 それはいつまでも、鈍く鈍く耳の奥で響いていた。

暗い道を進んでいく。 大切な体温を落とさぬように抱いて。その瞬間、視界が切り替わった。 「お疲れ様でした」 気付けばあなたは最初の部屋に戻っていた。手に抱いていた彼はいない。

染谷千冬 : 「……千秋が! おい、千秋は……!」

慌てて視線を彷徨わせると、ぴくりとガラスの棺で眠る彼の指が動いたのが見えた。 その雪のように白い肌に林檎のような赤みがさし、その唇からは沈黙ではなく柔らかな寝息が零れ始める。 「……千秋様はあちらの身体に戻られたようですね。ご気分はいかがですか?」

彼はまるで雑談のように軽く、そう問いかけてくる。

染谷千冬 : 「……」黙りこみます。

「ふむ。……千冬様、一つ提案が」 彼は黙り込んだあなたを見つめてそう告げる。

あなたの視界にあの忌々しい灰色のディスプレイが現れる。 そのディスプレイにはたった一言『実行』と書かれていた。 「そちらのディスプレイに触れれば、プログラムが実行されます。 このプログラムを実行すれば、あの人工知能に夢を見せることが可能です。あなたと暮らして、あなたと生きる。いつもの日常のしあわせな夢を。

さぁ、如何しましょうか。千冬様。 あなた様の意思でお決め下さい」

染谷千冬 : 「……先ほどまで与えていた苦しみは、あくまで『魂』とやらに近づけるためであり、もう必要ないということか? ……このプログラムを実行することによって、何かデメリットはあるのか?」

「ええ。あれは魂となり、もう苦痛を与える必要はありません。あの部屋へ通じる扉が空いたのが何よりの証拠です。 千冬様にとってはデメリットも、メリットもありません」

染谷千冬 : 「……ただの『人工知能』だ。別にどちらでも構わない。むしろ、なぜそんな選択をさせるんだ。お前の意図はなんだ?」

「私達には千秋様とあれの違いがどうもわかりません。千冬様が千秋様を愛しく思うように、あれをもまた愛しく思うだろうと考えた次第でございます。

私達は千冬様の選択を尊重します。 千冬様の選択を見届けることこそが私達の意図でございます。

あれをただの人工知能だと考えるなら、どうぞ実行しないことを選択してください」

染谷千冬 : 「……選べるのなら、苦しみはないほうがいい。これは千秋だからとか関係なく……人工知能でも、他のものに対しても、俺に苦しみを与える趣味はない」 ディスプレイに触れます。

あなたがディスプレイに触れると、文字が『実行しました』に変わる。ただ、それだけだ。 あなたは指先ひとつで、あの人工知能のこれからを変えたのだ。それが幸福かはわからない。

あなたは彼を散々利用し、そして気休めの救済を与えた。あなたがしたことは、これで少しは軽くなっただろうか? 「これで、あれはしあわせな夢を見続けるでしょう。 生き神を作るという、私達の目的は達成されました。お二人共、元の場所に転送させていただきます。 他に聞きたいことがなければ、千秋様を抱いてください。 私達は今後、貴方がたに接触しないと約束しましょう」

染谷千冬 : 「……ああ。二度と関わるな」 そう言って千秋を抱きます。

「千秋様を取り返したあなたに、幸のあらんことを」

あなたが千秋を抱きかかえたことを確認してから、何かぽちぽちと隅の機械を弄る。 同時に視界が白く、白く染っていく────。 ────あなたは目を覚ます。 まぶたを持ち上げれば、隣には静かに眠る千秋がいた。 生きている彼が、そこにいる。

染谷千冬 : 「……千秋」起こさないように頬を優しく撫で、千秋の存在を確かめます。

あなたがその頬に触れると、棺で触った時とは違って柔らかい感触が返る。 しばらくして、千秋はゆるりと目を覚ました。 ほんの少しさまようように彼は目線を動かした後、千秋はあなたを見つけて笑う。ただ、幸福そうに。

染谷千秋 : 「……千冬、はよ」

彼の少し甘えたようなその声で、今日も一日が始まる。いつも通り、幸せな朝が。

染谷千秋 : 「な、……千冬。助けてくれたんだよな?」

彼があなたを見つめ、目を細める。 手が伸ばされ、あなたは彼に強く抱き締められた。

染谷千秋 : 「ずっと暗い場所で眠ってたんだ。そしたら千冬が、迎えに来てくれた。そんな気がする。 さんきゅ。……俺を助けてくれて。 ……な、また何かに巻き込まれたんだろ?何があったか、教えてくれよ」

そうして苦笑する彼は、あなたのしたことを知らない。 その笑みを作る頬を殴り、あなたを見る目を潰し、笑い声を悲鳴に変えたことなど知らないのだ。 ただ、あなたに向ける目は深い愛情に満ちている。そしてふと、彼は首を傾げた。

染谷千秋 : 「……?何か、今……」

彼は辺りを見渡し、不思議そうに呟いた。

染谷千秋 : 「お前を許さないって、聞こえた気がする」 染谷千冬 : 「……」 部屋から去る時の、『千秋』の言葉が思い返されて目を伏せます。 「千秋、話がある。……」 染谷千秋 : 「……話って?」

あなたの言葉に、千秋は首を傾げた。 日常が戻ってきた。あなたが、その手で取り戻した。 沢山話さなければいけないことがある。まずは、何から話そうか──。 ◆ ーーーーーーーーーーーーーーー クトゥルフ神話TRPG 純愛、故に ED 『純愛、故に傲慢』 ーーーーーーーーーーーーーーー◆

シナリオクリアです! 生還報酬:SAN値回復1d7

染谷千冬 : 1d7 (1D7) > 3 [ 染谷千冬 ] SAN : 39 → 42

エピローグ

染谷千秋 : 「ん、話って?」 染谷千冬 : (……何から、言えばいいのか……) 染谷千冬 : 「……自分が、生き神になろうとしたことは覚えているか」 染谷千秋 : 「生き神……?なんだそれ」 染谷千冬 : 「……」 染谷千冬 : (……覚えてないか。……千秋が自殺をしたこと。でもこれは……もう、良くて。きっと俺も同じ選択をしていたから。……問題は、問題は……) 染谷千秋 : 「? 千冬……?」 染谷千冬 : 「……少し、ひとりにさせてくれ」 ベッドから抜け出して、ふらふらと千秋の部屋から出ます。 染谷千秋 : 「! っ、おい!」千冬の手を取ります。 染谷千秋 : 「千冬、顔色酷いぜ。そんな状態で一人にできるかよ。な、……こっち」千冬の手を引っ張って部屋に連れ戻します。ベッドに座らせて正面から顔を見ます。 染谷千秋 : 「何があった。何も考えなくて良いから、……思い浮かんだこと口に出せるか?」千冬の手を握って柔く口付けをします。 染谷千冬 : 「…………」 頭の中で思い起こされます。千秋と同じ思考をするものに投げかけた言葉を、それを聞いた千秋の虚ろな瞳を。 染谷千冬 : 「……ごめん。……でもしばらく、放ってくれ……」千秋が握る手を解いて、自分の部屋に行こうとします。 染谷千秋 : (千冬がこんなに動揺するなんて……、一体何があった? 千冬がこうなってしまう原因……、考えられるものはなんだ。さっきまでは普通だったから、怪異に怯えてるわけじゃない。純粋に怖がってるようには見えない……。 ……俺が『生き神』とやらになろうとしたことが関係してるのか?そうだ。千冬は今、俺から距離を取ろうとしてるようにみえる。思い返せば、千冬が青ざめたタイミングは、俺に何か伝えようとした時だった。巻き込まれた中で、俺関係する何かがあったんだ。 ……俺が千冬の立場だったらどうだ?一番苦しい時はきっと、千冬に何かしてしまった時……) 染谷千秋 : 「駄目だ。……千冬、俺の方みて」部屋に向かおうとする千冬を一度強く抱きしめます。その後、考え込んで焦点の定まらない千冬の頬をおさえて、自分の方へ向かせます。千冬のおでこに自分のおでこをくっつけて、千冬と目線を合わせます。 染谷千冬 : 「……」 千秋の淡い光の灯る紫の瞳が視界を占めますが、すぐに目を伏せて視線を逸らします。 「……今の俺じゃ、合わせる顔がない……。……考える時間が、ほしい……」 染谷千秋 : 「千冬。……一人で抱え込むなよ」千冬をゆっくりと部屋の扉に押し付けて、逸らされた顔に口付けを落としていきます。 染谷千秋 : 「俺のこと助けてくれたんだろ? 合わせる顔がないって思うような、……千冬が嫌なことをさ、俺のためにしてくれたんじゃないのか」 千冬の考える時間を減らすために、なるべく意識を逸らさせるように身体の至るところに触れながら言います。 染谷千冬 : 「……千秋のためじゃない。俺は……千秋を傷つけた……っ、千秋を苦しませたくないのに、千秋の隠してることを利用して、……っ、俺じゃ、だめなんだ。俺は千秋の力になりたいって思っていたのに、千秋は、俺のことが、信じられない。……俺は何もできない、無力で……千秋は、俺のせいで……」目に水の膜が浮かび上がって、ぽろぽろと零れます。 染谷千冬 : 「……千秋、離してくれ、……」 染谷千秋 : 「……、……嫌だ」涙を拭いながら話を聞いていました。 染谷千秋 : 「生き神ってのが何かはわからないけどさ。それが千冬の側にいられないようなものだったら、俺は生き神になんかなりたくない。 だから、もし俺が生き神になることを選んだんだとしたら、俺の意思関係なく、そうせざるを得なかった時だ。……俺一人じゃどうにもできなかった時なんだ」 染谷千秋 : 「俺がここにいるのは、千冬が助けてくれたおかげだ。記憶はないけど、何となくわかるんだ。 千冬がその行動をしなかったら、俺はここに、……千冬の側にいることもなかったんだろ? 今泣くほど苦しいのに、その行動を選んだのが、それが俺のためじゃなかったら、何だって言うんだ。 千冬は無力なんかじゃない」 染谷千秋 : 「……あと、俺が千冬を信じれないなんて、誰が言った。俺はそんなこと一度も言ったことないぞ。俺は千冬を信じてる」低い声で言います。 染谷千秋 : 「なぁ……、何があったのか聞かせてくれよ」そう言って頭を撫でます 染谷千冬 : 「……。何だったんだ、わ、わからない。千秋のことを助けたいのに、俺は千秋を苦しめた。……千秋は、俺の言うことなんて信じるべきじゃないのに、信じて、諦めた。きっと絶望した。俺はそんなこと言わない。でも、千秋は……それを信じた……」 染谷千冬 : 「……」 染谷千冬 : 「……千秋、俺は千秋のことが大好きだ。千秋のことを嫌いになるはずがない。千秋がいればそれでいい、千秋と出会えてよかった、千秋が生まれてくれてよかった。たとえ千秋が何を隠していても、そのことは変わらない。千秋がどんな罪を抱えていても、俺は一緒に背負う。俺から千秋と離れようなんて思うことはない。何も千秋のせいじゃない。自分を責める必要なんてないんだ。信じてくれ、……いや……」 染谷千冬 : (……信じられないから、信じられなかったから人工知能の千秋はあの場所にいるんだ!) 染谷千冬 : 「…………信じられない、だろう。……っは、……」 涙がぼろぼろと零れ落ち、服に染みが点々と生まれます。 染谷千冬 : 「千秋が隠していること、千秋が言いたくないなら、俺が無理に聞くべきじゃないと思っていた。……けど、知らないから、千秋は俺のことが信じられないまま、俺はずっと千秋のことが理解できないまま、……。……ごめん、何も力になれない、頼りない、兄で、俺は……ごめん……」 染谷千秋 : 「……、千冬……」 染谷千秋 : (巻き込まれた時に千冬が俺に言った言葉を、俺が信じたのか?それは、千冬にとって信じてほしくなかった言葉だった……) 染谷千秋 : 「千冬のこと、信じてやれなかったんだよな。……ごめんな」ぼろぼろと溢れる涙を丁寧に拭います。 染谷千秋 : 「……千冬のことを信じれなかったんなら、それはきっと、……俺の心が弱いからだ。千冬が悪いんじゃない」 染谷千秋 : 「……」(俺が諦めて絶望するような言葉、か。……千冬に軽蔑されること、失望されること、突き放されること、嫌われることか?……、いや。俺が一番怖いのは……、……) 染谷千秋 : (……どれも、俺達が普通に暮らしていく分には起こり得ないことだ。……けど、日記のことが知られたら、どうかな。……千冬はきっと……)深く息を吸います。 染谷千秋 : (言わずに済むんなら、それが一番いい。できれば隠しておきたかったけど、……ここで隠したら、千冬をもっと傷つける。ここで嘘をついて、後で俺の知らない時に知られるぐらいなら、今本当のことを言うべきだな。……腹くくるか……) 染谷千秋 : (言おう、全部。……こんな状態の千冬を放っておけるかよ) 染谷千秋 : 「……信じるよ、千冬。全部言う。立ったままじゃなんだしさ。座って」そうしてベッドに千冬を座らせます。 染谷千冬 : 「……ち、あき」 千秋に誘われるがまま、ベッドに腰かけます。 「……俺は今、きっと、冷静になれてない、から。千秋は、無理に言う必要ない。黙っているのにも、理由があるだろう。……俺のことは、気にしなくていい」 染谷千秋 : 「千冬。……無理して言ってるんじゃないんだ。どこかで言わなきゃいけないとは思ってた」 ふ、と笑って、千冬の目に浮かんできた涙をもう一度拭います。 染谷千秋 : 「……黙ってたのは、知ったところでどうにもできないと思ったからだ。過去に起きたことだから手の打ちようがなくて、ただ千冬に心配かけるだけだと思った」 染谷千秋 : 「それと、……、……。……単純に怖かったんだ。本当の俺は、千冬が思ってるような人間じゃないし……、」 染谷千秋 : 「千冬が前に言った言葉も、千冬の愛情も、全部信じてるよ」 染谷千秋 : 「……けど、いざって時に俺が千冬のこと信じられなかったってんなら、それは……、知られたらどうなるか分からないって、どこかで思ってたのかもな」 染谷千冬 : 「……」 染谷千冬 : (……それで、言いたくなかったのか。あの時も。……自分に自信がないから、……) 胸がぎゅっと絞めつけられます。そんな千秋にしてしまったことを思い出して、再び涙が溢れ出そうになります。それでも、千秋を理解するために、なんとか堪えて次の言葉を待ちます。 染谷千秋 : 意識して深く呼吸をします。 染谷千秋 : 「2年前のことから話す。俺がずっと隠してたこと。日記の話。……父さん母さんがいなくなった話だ」 染谷千秋 : 「この世界は俺が時間を巻き戻してからやり直した世界なんだ。願い事を叶える日記の力を使ってやり直した後の世界」 染谷千冬 : 「……やり直し? 日記? ……一体、何が」 染谷千秋 : 「ああ。日記っていうのは……、代償の代わりに願いを叶える不思議な力がある日記のことだ。代償は願いの大きさによって変わって、捧げるための期限が存在する。日記の使用者は、死んだ時点で人々から存在を忘れられる。そんな日記を、父さんが持ってたんだ。2年前の事件はその日記が大きく関係してる」 染谷千秋 : 「……千冬さ、父さんと母さんの記憶、一時期までなかっただろ?その日記の力によるものなんだ。父さんも母さんも、日記の使用者だったから」 染谷千冬 : 「……そう、だったのか。……じゃあ、千秋はどうして、覚えているんだ」 染谷千秋 : 「それは、俺も日記の使用者だからだ。正確には『だった』、だけど……。そのことは後で話す。 ……日記の使用者は他の人間より、少しだけ記憶が長くもつんだ。俺はその猶予を使って、別のノートに起きたことを記録してた。記憶が消えた後にそれを見て『前』に起きたことを知った。だから、実際は覚えてたわけじゃないんだ。……まあ、一年前に謎の空間で記憶を引っ張り出されて全部思い出したんだけどな」 染谷千秋 : 「……続ける。 父さんは日記の使用者だった、って言っただろ?父さんの願い事はさ、俺を助けることだった。俺は本来、流産で死ぬはずの子で……、それを父さんが日記の力で生かした。俺が生まれた日に父さんが入れ替わるように死んでるのは、日記の力によるものだ。そしてその日に、母さんと千冬から父さんの記憶が消え去ったんだ」 染谷千秋 : 「俺達は父さんが使った日記について知ることもなく、ごく平和に暮らしてた。……俺と千冬が17歳の秋までは」 染谷千秋 : 「父さんが管理してた物件を処理してくれって、役所から連絡があったんだ。 父さんのことを覚えてなかった俺達は、もちろん疑問に思った。そんで皆してその物件に向かった」 染谷千秋 : 「父さんについて何か手がかりがないかって、皆で探したよ。そしたら千冬が日記を見つけたんだ。日記の内容を読んで、父さんに関係してるんだって思ったんだろうな。俺達に日記のことを知らせた。俺達は千冬の方を見て、そんで……、千冬の後ろに化物の姿を見た」 染谷千秋 : 「なんでその化物がそこにいたかはわからない。けど……そこで母さんが死んで、俺はその時おかしくなった。 千冬は俺達の方を見てたから、その化物を目にすることはなかった。……そして、母さんが死んだのは、そして俺がおかしくなったのは、日記を見つけた自分のせいだって思ったみたいだ」 染谷千冬 : 「……」 染谷千秋 : 「……母さんは死んだけど、それでも俺達は無事に戻ってこれた。……おかしくなった俺は精神病院に入院した。俺、最初は会話が通じる状態じゃなかったらしいぜ。そん時の記憶はないけどな」 染谷千秋 : 「千冬は……、母さんが死んで身寄りもない中、病院に通いながら俺の世話を続けた。唯一残った俺もおかしくなって、きっと苦しいはずなのに、俺を見捨てなかった」 染谷千秋 : 「俺は少しずつ回復していった。……けど、完全に元には戻らなかったんだ。千冬に依存するようになって、それまでずっと隠していた、千冬への気持ちを隠せなくなった。『前』の世界の千冬は、そこで俺の気持ちに気付いて、……そんで、俺の気持ちは千冬への執着心から出た気持ちだって、……偽りの気持ちだって、思ったらしい。母さんが死んだのも、俺がおかしくなったのも自分のせいだって思った千冬は、全てを元通りにするために日記の力を使ったんだ。……千冬のせいじゃねーのにな」 染谷千秋 : 「二人の人生を変えるほどの願い。その代償は重かった。 日記に要求された代償は『99人の命と一人の血縁者の存在』だった。それを叶えるために、千冬は、……やりたくもない人殺しを、ずっと続けてたんだ。……そして約1年が経って、最後の代償、……『一人の血縁者』を捧げる日、千冬は俺に……出かけようって言ってきた」 染谷千秋 : 「……千冬は何も言わなかった。そん時には死ぬ覚悟を決めてたはずなのに」 染谷千冬 : (……これが、ちょうど一年ほど前に千秋が言っていた、『前』の俺の話……) 染谷千秋 : 「……、……。俺は何も知らずに、デートだって浮かれて、そんで千冬に告白した。俺達がよく釣りしにいく渓流あるだろ?あそこな、俺と千冬が初めてデートした場所だったんだ。遊び終わって、その日初めて千冬を抱いた。そして次の日、……千冬が消えるって日に、千冬から全てを知らされたんだ。俺の記憶はどうせなくなるから、ってな。…………、……。 ……千冬は俺に全てを話して、俺の目の前で命を絶った。……そん時さ、千冬は……、『誓いと懺悔』だって言ってた。 ……はっ、……俺の気持ちは、依存心から湧いた偽りの気持ちで、千冬はそれを利用してたんだってさ。全部自分のせいだから、だから元通りにすんだって。千冬のいない世界で、俺に笑って欲しいなんて言ったんだぜ」 染谷千秋 : 「……違ぇよ。全然違う。俺は千冬がずっと好きなんだ。生まれてからずっと、俺の世界には千冬しかいない。千冬以外どうでもよくて、それは父さんも母さんも例外じゃない。俺が千冬のいない世界で笑うなんてこと絶対にないんだ。だから俺の気持ちは偽りなんかじゃないし、千冬の気持ちだって懺悔するようなものでもない。……。……でも、もしそれを千冬が罪だって言うんなら、その気持ちを認められないんなら、俺は罪人でもいいって思った。千冬がどう思おうと、千冬を取り戻せるなら。……もう一度千冬の笑顔が見れるなら、なんだっていい。どんなことでもしてやる。……そう思って、日記の力を使った」 染谷千秋 : 「俺は『一年以上前に戻って、千冬に幸せに暮らしてほしい』って日記に書いた。千冬が自分の気持ちを否定しないで済んで、そんで笑って暮らせるならなんでも良かったんだ。……そうして日記の力で時間を巻き戻した。代償には俺が選ばれるはずだったんだ。……けど、実際の代償は『99人の命と染谷千春』……母さんの存在だった」 染谷千冬 : 「……!」 今から何が語られるか――千秋がしたことを察して、息を飲みます。 染谷千秋 : 「俺は……代わりのきく99人を殺す前に、まず確実に母さんを殺すべきだと思った。 そして母さんの存在を生贄に捧げるには、直接母さんに日記を書かせるしかないと思った。『存在』なんて曖昧なもの、殺しただけじゃ消えるか分かんなかったからな。 ……だから俺は母さんをうまく言いくるめて、母さんに願い事を書かせた」 染谷千秋 : 「母さんな、俺が騙したって気付いた後も、『生まれてきてくれてありがとう。たくさんの幸せをありがとう。二人共幸せにね』って言ったんだぜ。願い事も、『俺たちが仲良く暮らせるように』っていう、ただ俺と千冬の幸せを願うものだったんだ。俺はそこで……千冬の幸せを願う人間を、俺の欲のために消したことに気付いた。けど同時に思った。……これで千冬と二人きりだって」 染谷千秋 : 「……俺の願い事は母さんの願い事によって上書きされて、なかったことになった。そんで俺は、『前』に起こったことを書いてから、もう二度と日記を使えないように燃やしたんだ。それで……、千冬の気持ちを知ってる上で告白した。 ……これが俺が隠してたこと。2年前、実際に起きたことだ」 染谷千冬 : 「……千秋」 千秋のふわふわとした髪に手を伸ばし、優しく押さえます。言いたいことがたくさん溢れ出ますが、それらを飲みこみます。本当のことを言ってくれた千秋に、伝えることがあるから。 「……話してくれて、ありがとう」 染谷千秋 : 「……千冬」千冬を抱き寄せます。 染谷千冬 : 抱き寄せられた後、頭に乗せていた手を背中まで下ろして、もう片方の腕も回し、千秋を抱きしめます。 染谷千秋 : 「……」一度謝ろうとして口を開きますが、先程の千冬の言葉を思い出して何も言いません。強く抱きしめます。 染谷千秋 : 「千冬さ、さっき……、『頼りない兄でごめん』って言っただろ? 『前』にもさ、『兄としてふさわしくない』なんて言ったんだ。……なぁ千冬。俺に自分を責める必要なんてないって、言ってくれたけど、千冬だってそうだよ。謝る必要なんてないんだ」 染谷千秋 : 「俺は千冬がいたから、……千冬がいるから幸せなんだ。千冬が生まれてきてくれてよかった。千冬が俺の兄弟でよかった。千冬がいるから俺は俺でいられる。千冬が俺の全てなんだ。大好きだ。千冬が好きだ。世界で一番愛してる。こんな言葉じゃ足りないぐらい、千冬を愛してる。千冬のためならなんだってできるよ。例えそれが、誰にも許されないことだったとしても」 染谷千秋 : 「……俺は、自分の気持ちが間違ってるとは思わない。……いや、正邪がどうとか別に興味ないんだ。俺にとって、千冬さえいれば他は全部どうだっていい。千冬が笑っていてくれてたら、それでいい。なんだっていいよ。 ……けど、日記を使ってから、異様な程怪異に巻き込まれるようになって……、時々考える。全部俺のせいなんじゃないかって。 それで……俺が生まれなかったら、千冬はもっと幸せだったんじゃないかって思うことがある。変なことに巻き込まれずに、父さんと母さんに愛されながら、好きなことしてさ。そんな風に穏やかに暮らしてる千冬を考えたことが、少しだけあるんだ」 染谷千秋 : 「俺は生まれたことを後悔してないし、死のうと思ったこともない。ずっと楽しかったよ。千冬の側にいられたんだから。……だからもし、俺が千冬の言葉で絶望したんなら、……俺さえいなければって、どっかで思ってたのかもな。……」 染谷千秋 : 「……、……」 染谷千秋 : 「……そんで、隠してた理由がもう一つあるんだ。……これが一番大きい理由。……」ふ、と息を吐き出します。 染谷千秋 : 「この話を聞いた千冬が、俺に心配かけないようにって、俺になんも言わなくなること。それがすげー怖い。 俺が一番怖いのは、千冬に軽蔑されることでも、嫌われることでもない。……、……、千冬に置いていかれることだ。 俺を気遣った千冬が、また一人で抱え込んで、それで、俺の知らないところで、……っ、……、は……。 ……『前』みたいにまた、何を知らないまま、千冬を失うなんてごめんだ。 俺の知らないところで、千冬が苦しむのはごめんだ。 どんな時も千冬のそばにいたい。千冬の全てを把握していたい。だから……、だから言いたくなかった。隠したかったんだ」 染谷千秋 : 「……さっきさ、千冬のこと信じるって言っただろ。千冬が俺のこと、どれだけ愛してくれてるかわかってるよ。俺が千冬のこと信じなかったってのが信じられないぐらい、千冬のことを信じてるつもりだ」 染谷千秋 : 「……けど、ごめん。一つだけ、どうやっても信じられないことがある」 染谷千秋 : 「俺から離れようなんて思うことはないって言葉、……、……それだけは……。ごめん……」 染谷千冬 : 「……どうして……、……いや」今までの話を思い返して、言葉を切ります。 染谷千冬 : 「……俺が、自殺したから、か」 染谷千秋 : 「……」ぎゅう、と抱きしめる腕に力を込めます。 染谷千秋 : 「……もし、もしさ、俺が危ない目にあって、代わりに千冬の命を求められたら、……もし、どっちかしか生きれなかったらどうだ?」 染谷千秋 : 「……千冬はきっと、自分の命を犠牲にして、俺を助けるだろ。……それで……」 染谷千秋 : 「それで、……俺に生きろって言うんだ。……違うか」 染谷千秋 : 「……俺の世界は千冬だけでいい。千冬以外何も要らない。千冬だけがいい。 たけど千冬は笑ってさ、俺に、……、正しい世界で生きろって言うんだ。きっと……、だから……」震える手で千冬を抱きしめて、黙り込みます。 染谷千冬 : 「……そう、だな。もし、千秋が言うような状況になったら……俺は迷わずに自分の命を差し出すだろう。俺よりも、千秋に生きてほしい。……だから前にも、『約束できない』って言った。一年ほど前の、あの『対談』の空間で。自分の身が、どうなってもいいわけじゃない。千秋とふたりで生きる道を探す。それでも、そんな方法がなくて、自分の力ではもうどうしようもない時は……俺は自分の身よりも、千秋のほうが大事だから。……千秋に生きていてほしい。……俺からも、話さなければいけないことがあるな」 染谷千秋 : 「っ……」 染谷千冬 : 「……俺も、千秋に黙っていたことがあった。まず最初に、……一昨年の夏。千秋が『夢で俺を殺そうとした』と謝った日のことだ。覚えてないと言ったが、千秋が疑っていた通り、俺も覚えている。あれは俺の夢で……きっと俺のことを助けようとしてくれていた千秋は、虫によって殺人衝動を抱えていた。……確かに、俺の死によって千秋のことを救えることはわかった。でも、俺は夢の中でも、千秋に人殺しをさせたくなかった。だから自分で死んだ。……最後、見られていたみたいだったな。……でも、本当にあったことだと思うより、ただの夢だと思っているほうが、千秋にとって良いと思った。だから黙っていた。実際に、夢というのも間違いではないから。……これが一つ目だ」 染谷千秋 : (やっぱ覚えてたか……) 染谷千冬 : 「次に、去年の冬――俺が住所や家の記憶を失って、千秋に探されていた時。……あの時本当は、住所や家の記憶の他に……千秋のことと、自分の名前の記憶も奪われていた。でも、そのことを千秋に言ったら、余計な心配をさせると思った。その前の怪異で、千秋が俺の身に危険があった時にどれほど怖がっているか、わかったから。ただの家に帰る実験だと伝えたほうが、危険性が低く伝わって、千秋を心配させないだろうと思った」 染谷千秋 : 「……そう、だったのか」 染谷千秋 : 「……」千冬が戻ってきてくれてよかったと思いながら、手に力を込めます。 染谷千冬 : 「……次に、この、今日の出来事は」 鮮烈に焼きついた映像が脳で再生されます。はあ、とため息をつきます。 染谷千秋 : 「……」千冬の頭をなでます。 染谷千冬 : 「千秋が駅のホームに飛び込んで、自殺した。それは『生き神』になるためだと男は言った。皆が死なないために……いや、もしかしたら、俺が死なないためにだったのかもしれない。俺にはわからない。……そしてその時、確かに俺はその男に、『俺が生き神になってもいいから、千秋を助けてくれ』と言った。……」 染谷千秋 : 「俺が……自殺?」 染谷千冬 : (そんで、……、千冬はまた……) 染谷千冬 : 「……先に全部、言おう。結果的に、俺の魂では駄目だった。でも、そこには千秋のことを完全にコピーした、姿や思考も全く同じの人工知能がいた。その人工知能に苦しみを与えれば、死んで生き神となった千秋の魂と交換できると言われた。それで、苦しませるための拷問を課せられた。人工知能の千秋を、殴って、蹴って、指の骨を折った。脚を切った。……その他に、俺は、千秋の隠してることを利用して、拒絶するようなことをたくさん言った」 染谷千冬 : 「……嫌い、信用できない、出会わないほうがよかった、千秋なんて生まれないほうがよかった、これが幸せなわけない、全部後悔してる、もう要らない……そんなこと、絶対に思わない。でも、苦しめるために、言った。そうしたら千秋は、俺のせいだ、隠して正解だった……って……。人工知能でも、千秋の思考をトレースしているなら、本当の千秋もそう思うんだ。隠して正解だったなんて、思ってほしくない。悲しい時は言ってほしい。千秋のことを教えてほしいのに……」 声が震えて詰まりますが、我に返って、少しの間口を噤みます。心を落ち着かせるために。 染谷千秋 : 「……。辛かっただろ」悪趣味すぎる異空間に嫌悪感を覚え、自分のために苦しんだであろう千冬の背中を優しくさすります。人工知能の発言に一度思考を巡らせますが、まずは千冬の話を聞こうとそれ以上口を挟むことはしません。 染谷千冬 : 「……ごめん。……そうやって十分に苦しめて、人工知能と千秋の魂を交換し、千秋を取り戻した。……今回は、俺は危険な目には遭ってない。むしろ千秋が……いや、この話はやめよう」 染谷千秋 : (……。千冬の魂が『生き神』に適していたら、今頃……。よかった……) 染谷千秋 : 「……そっか。……千冬、話してくれてありがとう。助けてくれてありがとう。辛かっただろ。……苦しかっただろ」 染谷千秋 : 「……『俺のせい』『隠して正解だった』か。俺が同じことを言われたら、……千冬に後悔したって思わせるぐらいなら、そっちの方がいいって思う。……けどそれは、千冬が考える程悲しいものじゃないんだ。……俺にとっては、だけど。 ……でも、……隠されたら嫌だよな。ごめん」 染谷千秋 : 「それと……自殺したのも。千冬にしてほしくないって言いながら、きっと、俺も同じことをしたんだよな。……ごめん」 染谷千冬 : 「……俺は苦しくない。大丈夫だ」眉を下げ、微笑みます。 染谷千冬 : 「……俺が後悔しているから、千秋は苦しかったということなのか? ……それは、悲しい。……なんて、傷つけたのは俺なのに、な。でも、俺がそんなこと思うわけないんだ。俺は千秋にそうやって自信を失ってほしくない。諦めないでほしい。……隠されてることが、嫌なんじゃなくて、俺は千秋が、陰で苦しんでるのが、怯えているのが嫌なんだ。謝らなくていい。……千秋」 染谷千冬 : 「……俺たちは、馬鹿だな。相手のことを想って、そのせいで傷つけてたんだ。……もうやめよう。『相手のためなら何でもできる』、じゃないんだ。ちゃんと、ふたりで決めよう。ふたりで一緒に生きよう。俺は千秋を求めている。千秋のことを愛している。……千秋の隣にいられることが、俺の幸せなんだ。前にも言っただろう」 染谷千冬 : 「千秋のいない人生なんて、考えられない。千秋が生まれた時から、ずっとずっと好きだった。俺にとっての唯一の存在だった。千秋が欠けた俺なんて、俺じゃない。……俺も、千秋を信じるから。だから千秋も、俺を信じてくれ……千秋は何も悪くないということ、千秋は俺に、世界で一番、何よりも愛されていること。これからは絶対に、千秋から離れない。一生一緒にいるということを」 染谷千秋 : 「……はは、そうだな。すげー馬鹿だ」 染谷千秋 : 「……約束する。千冬を信じるよ。千冬が俺にくれた言葉を、千冬自身を。俺も絶対に離れない。……二人で一緒に生きよう。ずっと」そう言って千冬の手を握りしめます。 染谷千冬 : 握りしめられて手を強く握り返して、穏やかな表情で千秋を見ます。そしてその唇に、自らの唇を合わせます。 「……ずっとだ。もう、離さない。千秋、大好きだ」 染谷千秋 : 「……俺も、離さない。千冬、……愛してる」千冬の唇を迎え入れ、口付けを深くします。

────あなた達はそうして、長年胸に押し込めていた秘密を打ち明けた。 互いを想い、互いのために閉まっていた隠し事を、二人で生きていくために、信じるために打ち明けた。

あなた達はこれからも二人で生きて行くのだろう。どんな困難が待ち受けようと、その手を固く握りしめて。そうして歩みを進めるのだろう。

その手を離さずに生きていくあなた達にどうか、どうか幸多からんことを。

背景

あるシノーソグリスの信者がいた。 彼はシノーソグリスにより与えられる死は最高のものだと考え、それをほかの人間にもわけあたえようとした。 そして彼はある駅に『シノーソグリスの道』を作った。 それはシノーソグリスが定期的に行き来する道であり、死を振りまく道だ。 そこをシノーソグリスが通過すれば駅にいる人間はみなシノーソグリスの死を迎えるだろう。 そして死んだ人間は新たな『道』となり、シノーソグリスの行動範囲を増やしていく。 よってこのまま放置すれば生きとし生けるものは全て死滅することとなる。

これを恐れたのが人間を研究していたあるイス人である。 そのイス人は人間の魂を使い、駅にできたその道を封じ込めようとした。 そして千冬を犠牲にするために、夢の中で千冬に接触した。 千冬を選んだ理由は『道を閉じるのに最適な魂だった』からだ。 その道は最適な魂を持つ人間でないと、閉じることができないものだった。

千冬が犠牲にならないと回り回って千秋が死ぬことになることを引き合いに、イス人は千冬を説得し、千冬はそれを了承した。 しかしその時、その夢に巻き込まれていた千秋が千冬の身代わりを買って出た。 イス人は千秋も使える魂を持っていることに気付き、了承する。 千秋は千冬とのお別れを済ませ、道を塞ぐために電車に飛び込むこととなる。

千秋が死んだ後の千冬と千秋を観察していたイス人はふたりを哀れに思い、 千冬のアフターケアのために千秋の人格をコピーした人工知能を作成する。 そして千秋の身体を復元し、その人工知能を千秋の身体に入れることで千秋を再度作り直そうとしていた。 しかしここでイス人はこの人工知能を魂の代わりにすることを思いつく。 しかし人工知能はあくまで人工知能であり、人間の魂では無い。 人間の魂の代わりとするには人間が生きる上で必要な『喜び』と『苦しみ』がいる。

イス人は千冬を呼び出し、この千秋をどうするかの選択を迫ることにした。 この人工知能は千秋なのか、千秋では無いなら千秋を取り戻すためにこの人工知能を傷つけて殺し、最愛の千秋を取り戻せるのか。 人工知能は千冬がそばにいることに喜びを感じ、千冬に傷つけられることにより苦しみを覚える。 よってこれにより人間の魂の代わりとなることが出来る、というのが本シナリオである。

おまけ

◆ 千秋が考えていたこと ・千秋が駅で呟いた言葉 「俺に縛られてよ」

・「俺のせいで」という言葉について 千秋的には言葉通りの意味だった。それ以上でもそれ以下でも多分ない。 自分のせいで千冬の周りの人がいなくなっている、という事実を言ってるつもりだった。 だからそのことで必要以上に自分を責めることはない。

でも客観的に見てあり得ないことをしてる自覚はあるため、失望されたら失望されたで「まぁそうよな」とは思う。それぐらいの温度感。 千冬と自分は違う人間だと思っていて、千冬が普通の感性寄りなのを理解しているから尚更、そう言われたらすんなり受け入れる精神だった。 実際に送るはずだった普通の人生を邪魔した自覚はあるし、千秋のせいで両親が死んだりもろもろ崩れたのも事実なので。

だけどそこに罪悪感や後悔などは千秋の中ではあまりない。 千冬の側にいるために自分が選択したことだからだ。 知られて失望されるリスクを承知の上で、千冬の側にいるために選んだことだから。

・千秋の思考回路と恐怖について 千秋の優先順位は変わらず「千冬の幸せ>千冬の側にいること>その他」。

だから千秋的には、千冬に嫌われることに関する恐怖は全然ない。 千冬が千秋に向ける感情がどんなものであれ、千秋のスタンスには何ら影響を及ぼさないから。 何があろうと自分が千冬を好きなことに変わりはないし、嫌われたら嫌われたで自分が千冬にできることをするだけだから。 それでも千冬の側にいれるよう動くし、千冬が本気で自分のこと嫌なら離れて見守りつつ千冬の幸せのために動くつもり。千冬が幸せならそれでいい。(嫌っちゃ嫌だしもちろん好かれてる方が嬉しいけど) 1割程度は気になるけど、それでも極論千冬にどう思われようがいい。 だから千冬が千秋をどんな風に扱おうと最期まで千冬のこと好き。

千秋が恐れていることは、本物が言った通り「千冬が自分を置いていくこと」と、「千冬が幸せじゃないこと」の二つ。 これだけは許せないし耐えれない。

日記のことは、知られたら失望される可能性もあるな~程度のもので、千秋的には千冬のことを本気で信じてるつもり。千冬が自分を嫌うことはほぼないと思ってる。 信じてるからこそ、千冬が自分を大事に思っていることを知っているからこそ、置いてかれることを一番怖がってる。

・最後の扉が開いた理由

扉が空いた(千秋が絶望した)のは、千冬に軽蔑されたことそれ自体じゃなくて、千冬の「後悔した」て言葉に絶望した(というか生きる意味がなくなった) 「全部バレた上で千冬がそう望むんなら、俺にはもう千冬にしてやれることがないし生きててもしょーがねーな。なら別にもう死んでもいいや」

ケタケタ笑ったのは自分のしょーもない足掻きと、しょーもない人生が全然千冬のためにならなかったんだって分かって、それを突き付けられて、滑稽だなーって自分を俯瞰して笑ってた。バカなやつ。

この時の絶望は静かなもの。ただ生を手放す、それだけのもの。苦しいものじゃない。(けどその後にガチの絶望待ってた)

・「やっぱり隠して正解だった」の発言 「やっぱり隠して正解だった」の真意は、千秋は千冬を幸せにするために動いてるから、千冬が人生を後悔することがあってはならなかった。なのに千冬の口から後悔という言葉が出て、尚更今まで隠しててよかったって思った。 千冬視点からみたら、千秋が千冬のこと信じれなくて、千冬が千秋に失望すると思ってたから出た発言だと思ってそう。すれ違い。

千秋視点「(千冬が人生後悔するぐらいなら、知らない方が幸せだったろうし)やっぱり隠して正解だった」 千冬視点「(千冬が隠し事を知ったら、俺に失望して嫌うと思ってた。だから)やっぱり隠して正解だった」

・普段何故隠し事が多いのか 自分にとってどうでもいいことだから&千冬は知らない方がいいことだと思うから 痛いとか苦しいとかどうでもいいことに千冬との貴重な時間使うなんてとんでもない!の思考回路なので言わないだけ。 千冬が自分を大事に思ってることを知っていて、きっと千冬は自分を心配するだろう。でも後から言ってもどうしようもないことだから、言ったらただ千冬が心配して辛いだけ。って思うから言わない。 もし千冬にとって話した方がいいことなら全然話す。

日記について今まで黙ってたのは千冬がまた自責するかもなって気持ちと、話したら千冬が側にいなくなるかもっていう恐怖から。けど千冬の涙みて、黙ってることが最善じゃないって判断したし、そっからはわりかし割り切ってる。自分のちっぽけな感情より千冬の感情を優先してる。